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2026.09.09親子の時間は、思っているよりずっと短い

先日、SNSでこんな「親子の数字」を見かけました。

・親子の時間の8割は18歳までに終わる
・一緒に眠れるのはたった10年ほど
・手をつないで歩けるのは9歳ごろまで
・子どもと過ごす夏休みは12回
・「遊ぼう」と誘ってくれるのは10年間だけ
・子育ては平均すると8,760日

……こうやって数字にされると、ちょっとドキッとしますよね。

「え、そんなに短いの?」

と思ってしまいます。

ただ、この数字について調べてみると、出典がはっきりしないものも多く、私はそのまま「科学的な事実」として紹介するのは違うなと思いました。

それに、SNSで見かけた数字がこれだからといって、わが家も同じになるとは限らないですしね。

でも。

「親子の時間は、ずっと同じ形で続くわけではない」

これは、確かにそうなんだと思います。


親子で一緒に過ごす時間は、実際に減っている

2025年にシチズン時計が、小学生の子どもを持つ共働き夫婦400組を対象に「親子のふれあい時間」を調査しています。

それによると、親子で一緒に過ごす時間は、

平日:2時間19分
休日:4時間19分

でした。

しかも、2012年の同じ調査と比べると、

平日は41分減少。
休日は70分減少。

親子で一緒に過ごす時間は、13年前より短くなっていました。

もちろん、これは「親子の時間が減ったから、もっと一緒にいなければ!」という話ではありません。

仕事もある。

学校もある。

習い事もある。

子どもにも子どもの世界ができていく。

親子がずっと一緒にいることが、必ずしもいいわけではありません。

むしろ、子どもが成長して親から少しずつ離れていくことは、とても自然なことです。


「一緒にいる時間」より、私が気になること

私は、子どもたちがもう大人になった今だからこそ思うことがあります。

子育てをしている真っ最中は、

「今日もちゃんとご飯を食べさせなくちゃ」

「明日の準備をさせなくちゃ」

「宿題やった?」

「早く寝なさい!」

そんなことで一日が終わっていきます。

親子で過ごす時間を、

「どれくらい長くできたか」

なんて、ほとんど考えたことなんてなかった気がします。

でも、振り返ってみると記憶に残っているのは、意外と特別な日ではありません。

一緒に愛犬の食事をのぞき込んで見たこと。

車の中で延々としりとりをしたこと。

保育園からの帰り道、しゃがみ込んで水路に石を投げたこと。

「見て!見て!」と言われて、振り返ると大抵工事現場の重機だったこと。

「すごいね~」と言いながらもってくるのは、私の苦手だった昆虫ばかりだったこと。

何気ない日常の中にあった、小さなやりとりです。


子どもとの時間は「長さ」だけでは測れない

乳幼児期の子どもとの関わりを考えるとき、私はここがとても大切だと思っています。

親子の時間を、単純に「何時間一緒にいたか」だけで考えないこと。

たとえば、ママ友とのお出かけに3時間、子どもを付き合わせたという日と、忙しくて15分しかなかったけど、絵本を見ながらいっぱいおしゃべりした日。

どちらが子どもにとって、心が満たされるでしょうか?


ベビーサインで大切にしているのも、実はそこ

私がベビーサインを長年伝えてきて、今改めて思うのは、

ベビーサインは「教えるもの」というより、親子のやりとりを増やすきっかけになるもの

なのだということ。

たとえば、赤ちゃんが「もっと」とベビーサインで伝えてくれた。

ママは「もっと?欲しいの?」とサインと言葉で返す。

すると赤ちゃんがもう一度サインをする。

「もっと食べたいのね」

と確認しながら応える。

そんなほんの数秒のやりとりです。

でも、その中には、

「あなたが伝えたこと、ちゃんとわかったよ」

「あなたのことを見ているよ」

という親子のコミュニケーションがあります。

もちろん、ベビーサインを使わなくても、こうしたやりとりはできます。

大切なのは、サインの数でもありません。

何歳までに何個覚えたかでもありません。

子どもが何かを伝えようとしたときに、大人が気づいて応えてあげること。

その積み重ねこそが、親子の時間を豊かにしていくのだと思います。


「今しかない」と焦らなくてもいい

「子どもとの時間は今しかない」

そう言われると、親はちょっと焦ります。

もっと遊んであげなきゃ。

もっと話を聞かなきゃ。

もっと一緒にいなきゃ。

でも、私はもう少し肩の力を抜いてもいいと思っています。

子どもは成長します。

手をつながなくなる日も来る。

「一緒に寝よう」と言わなくなる日も来る。

「遊ぼう!」と誘ってくれなくなる日も来る。

そして、いつの間にか親とは別の世界を持つようになる。

それは、寂しいことでもありますが、

子どもがちゃんと成長している証でもあります。

だから、

「今しかないから、もっと頑張らなくちゃ」

ではなく、

「今、目の前にいるこの子と、ちょっとだけやりとりを楽しもう」

くらいでいいのかもしれません。


子どもとの時間は、確かに短い。

でも、その時間は「何年」という数字だけでは測れない。

「見て!」

「なあに?」

「これ!」

「ほんとだね」

そんな何気ないやりとりが積み重なって、親子の時間になっていく。

だから私は、

親子で過ごす時間を増やすことだけではなく、
今ある時間の中に、どんな「やりとり」を増やせるか。

そこを、これからも大切に伝えていきたいと思っています。

2026.09.011歳の赤ちゃん、もう「人を助ける」をしていた?

赤ちゃんは「お世話されるだけの存在」じゃなかった

赤ちゃんって、まだ何もできない。

大人がごはんを食べさせて、着替えさせて、危険から守ってあげる。

そんなふうに、「赤ちゃん=お世話される存在」と考えるのは、ごく自然なことですよね。

でも、乳幼児の発達研究を見ていると、時々、

「えっ、もうそんなことをしているの?」

と驚かされることがあります。

今回ご紹介したいのは、その一つ。

なんと、1歳前後の赤ちゃんが、すでに「人を助ける」行動をしているという研究です。

しかも、「ママのお手伝いをしてね」と教えられたわけでもありません。

1歳の赤ちゃん、8割以上が「助けた」

2024年に発表された研究では、11~20か月の乳幼児220人を対象に、どのくらいの子どもが人を助ける行動をするのかが調べられました。

その結果、12か月児153人のうち、80%以上の赤ちゃんが、実験者が手の届かないところにある物を取ろうとする場面で、助ける行動を見せたのです。

「えっ、1歳って、もうそんなことするの?」

と思いませんか?

しかも、この研究では、実験者が「取って」とお願いするのを待って助けたわけではありません。

研究では、赤ちゃんが助けた場合、その多くが最初の20秒以内に起こっていました。

つまり、言葉で「助けて」と頼まれる前に、赤ちゃん自身が状況を見て行動していたのです。

もちろん、ここから

「1歳児は大人と同じように相手の気持ちを理解している」

と考えるのは早すぎます。

ここは、とても大切なところ。

研究で見られたのは、主に**instrumental helping(道具的援助)**と呼ばれる行動です。

たとえば、

「大人が物を取ろうとしている」

「その物が届かない」

「赤ちゃんが物を持ってきてあげる」

というような、

「相手がやろうとしていることを手伝う」

という行動です。

「やさしい子だから」だけでは説明できない

ここが、この研究を読むときに面白いところです。

私たちは子どもが誰かを助けると、

「やさしいね」

「いい子だね」

と言いたくなります。

もちろん、それは素敵なこと。

でも、発達心理学では、

「なぜ、こんなに早い時期から助ける行動が出てくるの?」

ということを考えます。

実は、こうした「助ける」行動については、2000年代からさまざまな研究が行われてきました。

WarnekenとTomaselloの研究では、18か月の子どもたちが、大人が物を落としたり、扉を開けようと困っていたりする場面で、頼まれていないのに助ける行動を示しました。しかも、必ずしも報酬をもらうためではありませんでした。

さらに、その後の研究から、こうした「助ける」行動は、もっと早い時期から見られることが分かってきました。

現在では、生後1年頃から、他者の目標を達成するための手助けが現れることが示されています。

ただし、「助ける」にも発達がある

ここがまた面白いところです。

「人を助ける」と一言で言っても、実は発達していきます。

最初の頃に見られるのは、

「あの人が何かしようとしている。じゃあ、その物を取ってあげよう」

というような、行動を助けるタイプ。

その後、発達が進むにつれて、

「この人、困っているみたい」

「悲しそうだから、慰めてあげよう」

というような、相手の感情や状態に応じた援助も増えていきます。

研究では、こうした**「行動の目標を助ける」ことから、「相手の苦痛を和らげる」ような援助へ**という発達的な変化が指摘されています。

つまり、

「助ける」という行動そのものにも、心の発達の階段がある。

ということなんです。


じゃあ、赤ちゃんは何を見ているの?

赤ちゃんは、ただ「物」を見ているわけではないのかもしれません。

「この人は、何をしようとしているんだろう?」

ということにも、少しずつ目を向けている。

もちろん、1歳の赤ちゃんが大人と同じように相手の心を読んでいるわけではありません。

でも、

「手が届かない」

「取ろうとしている」

「困っている」

といった状況を見て、自分の行動を変える。

そこには、

「自分」だけではなく、「相手」へ向かう心の動き

が見えてきます。

そして、これは乳幼児期の「社会性」を考えるうえで、とても大事なポイントだと思うのです。


赤ちゃんは「伝えてもらう側」だけじゃない

ここで、ベビーサインにもつながってきます。

赤ちゃんとのコミュニケーションというと、

「大人が赤ちゃんに話しかける」

「大人が赤ちゃんに教える」

という、大人から赤ちゃんへの方向を考えがちです。

でも、赤ちゃんはもっと早い時期から、

自分から人に働きかけています。

たとえば、

「これ、取って」

「これが欲しい」

「もっと」

「見て!」

という、自分の気持ちや要求を伝える。

さらに発達すると、

「ママ、これだよ」

「パパ、ここにあるよ」

というように、相手に情報を伝えるためのコミュニケーションも出てきます。

12か月頃の乳児が、相手が探している物の場所を指差して知らせることを調べた研究もあります。

ここまでくると、

「コミュニケーション=自分の要求を伝えること」

だけではないことが見えてきます。

人に何かを伝える。

人の行動を助ける。

人と一緒に何かをする。

そうやって、少しずつ「人と人との関係」ができていく。


「お手伝いして」と言わなくても、赤ちゃんは見ている

だから、赤ちゃんが何かを拾ってくれたとき。

大人が落としたものを持ってきてくれたとき。

洗濯物を触っているとき。

お片付けをまねしているとき。

つい、

「危ないよ」

「まだできないよ」

と止めてしまうこともあります。

もちろん、安全に関わることは止めてOKです。

でも、安全に問題がないことであれば、

「何をしようとしているのかな?」

と、一度見てみる。

そして、

「持ってきてくれたの?」

「ありがとう」

「助かったよ」

と返してみる。

それだけでも、

「自分の行動が、人の役に立った」

という経験になります。


「いい子だから助けた」ではなく、「人と関わる力」が育っている

ここは、子育てで大切にしたい視点だと思います。

「助けたから、いい子」

ではありません。

「お手伝いできたから、えらい」

でもありません。

むしろ、

「あなたは、人と関わることができるよ」

というメッセージとして受け取ってみる。

赤ちゃんが何かを持ってきたら、

「○○ちゃんが持ってきてくれたんだね」

と、その行動に気づく。

赤ちゃんがベビーサインで何かを伝えてきたら、

「○○って教えてくれたんだね」「そうだね。○○だね」

と言葉とベビーサインで返す。

そうすると、

「私が何かすると、相手が返してくれる」

という、人とのやりとりの感覚が少しずつ積み重なっていきます。

これは、単に「できることが増える」という話とは少し違います。

「自分は人と関われる」

という感覚です。


赤ちゃんを見る目が、少し変わるかもしれない

「赤ちゃんは、まだ何もできない」

そう思っていると、

泣いたらあやす。

お腹がすいたら食べさせる。

眠かったら寝かせる。

というように、どうしても「お世話」が中心になります。

でも、

「この子は今、私と何をしようとしているんだろう?」

という目で見てみると、少し景色が変わります。

こちらを見ている。

手を伸ばしている。

物を渡してくる。

こちらのまねをする。

何かを知らせようとする。

助けようとする。

赤ちゃんは、思っている以上に早くから、

「人と一緒に世界をつくる側」

になっているのかもしれません。


そして、ベビーサインを考えるときにも

私はここが、とても大切だと思っています。

ベビーサインは、

「赤ちゃんに言葉を教える方法」

だけではありません。

赤ちゃんがまだ話せない時期から、

「私はこう思っているよ」

「これを伝えたいよ」

と、自分から人に働きかけるための手段の一つです。

そして、大人がそれを受け取って、

「そうなんだね」

「教えてくれてありがとう」

と返す。

その繰り返しの中で、

「伝えるって楽しい」
「伝えると、誰かが応えてくれる」

という経験が生まれる。

だから私は、ベビーサインを「サインをいくつ覚えたか」だけで見てほしくないのです。

そのサインの向こう側にある、

「人とつながる力」

にも、ぜひ目を向けてほしいと思っています。


赤ちゃんは、今日も何かを「伝えよう」としている

もしかしたら今日、

あなたの赤ちゃんが何かを拾って持ってきてくれるかもしれません。

あなたが探しているものを指差して教えてくれるかもしれません。

手を伸ばして、「こっち」と知らせてくれるかもしれません。

そんなとき、

「何してるの?」

で終わらせずに、

「あ、教えてくれたんだね」

「手伝ってくれたんだね」

と、その小さな行動を受け取ってみる。

赤ちゃんの中には、私たちが思っているよりずっと早くから、

「人と関わりたい」
「人に伝えたい」
「人の役に立ちたい」

という力の芽が育っているのかもしれません。

そして、その芽を見つけて、

「ちゃんと見ているよ」

と返してあげること。

それもまた、乳幼児期の大切なコミュニケーションなのだと思います。


参考文献

Donohue, M. R., Hennefield, L., & Rogers, C. R. (2024). Prevalence and characteristics of infants’ prosocial helping strategies between 11 and 20 months of age. Developmental Psychology, 61(2), 215–227.

Warneken, F., & Tomasello, M. (2006). Altruistic helping in human infants and young chimpanzees. Science, 311(5765), 1301–1303.

Warneken, F., & Tomasello, M. (2007). Helping and cooperation at 14 months of age. Infancy, 11(3), 271–294.

※今回の研究で確認されているのは主に、相手の行動上の目標を助ける「道具的援助」です。そこから、より感情に寄り添った援助へと発達していくことが示されています。

2026.08.24子育てしかしてこなかった・・・

「子育てが一段落したら、何をしよう?」
「今までの経験を、何か仕事につなげられないかな?」

そんなことを考えたことはありませんか?

私は、ベビーサイン協会の運営をしながら、ずっと感じていることがあります。

それは、

子育て経験は、ちゃんと誰かの役に立つ。

ということ。

「資格を取って仕事にしたい」だけじゃない

ベビーサイン講師を目指す人には、いろいろな人がいます。

保育士さん。
助産師さん。
子育て中のママ。
子育てを終えた人。
会社員をしながら、もう一つの仕事を始めたい人。

そして、

「赤ちゃんが好きだから」

という、とてもシンプルな理由で来る人もいます。

最初から、
「私は講師になります!」
と強い決意を持っている人ばかりではありません。

むしろ、

「ちょっと興味があります」
「自分にもできるかな?」

くらいのところから始まる人もたくさんいます。

でも、講師になると見える景色が変わる

ベビーサイン講師の仕事は、単にサインを教える仕事ではありません。

赤ちゃんを見ます。
ママの話を聞きます。
「この親子には、今どんな関わりが必要だろう?」と考えます。
赤ちゃんが初めてサインを見せてくれた瞬間に、一緒に喜びます。
「昨日までできなかったことが、今日できた!」という成長を、ママと一緒に喜ぶこともあります。

つまり、

赤ちゃんとママの「できた!」に立ち会う仕事。

それが、私が20年以上見てきたベビーサイン講師という仕事です。

「子育てしかしてこなかった」は、本当に「しか」なのか?

私は、ここにちょっと違和感があります。

「子育てしかしてこなかったから……」

という言葉。

でも、子育てって、

人を観察する。
相手の気持ちを想像する。
うまくいかなければ方法を変える。
小さな変化に気づく。
相手に合わせて伝え方を変える。

毎日、これを繰り返しているんですよね。

もちろん、講師になるためには専門的な学びが必要です。

だからこそ、私たちは8日間の講師育成プログラムを用意しています。

でも、そのスタート地点にある「子育て経験」は、おっきなプラスになります!

「経験」を「専門性」に変える

講師育成プログラムで学ぶのは、ベビーサインだけではありません。

赤ちゃんの発達。

ベビーサインの知識。

サインの技術。

親子への伝え方。

教材の使い方。

教室の作り方。

そして、実際に人前で教える経験。

これらを一つずつ積み重ねて、

「子育てをしてきた私」

から、

「子育て経験と専門知識を生かして、親子にベビーサインを伝える私」

へ。

変わっていく。

私は、ここに講師育成の意味があると思っています。

最初から「先生」じゃなくていい

「人前で話すのが苦手です」

「自信がありません」

という方もいます。もちろんです。

最初から上手に話せる人ばかりではありません。

講師育成では、実際にデモレッスンをして、フィードバックを受けます。

やってみる。

うまくいかない。

教えてもらう。

もう一度やってみる。

その繰り返しの中で、少しずつ「伝えられる人」になっていく。

だから私は、

「最初から講師らしい人」を探しているわけではありません。

「赤ちゃんとママに、ベビーサインを届けたい」

その気持ちを持っている人と出会いたいと思っています。

画像

9月14日、新しい8日間が始まります

ベビーサイン講師育成プログラムは、8日間。

短いようで、きっといろいろぎゅっと詰まった8日間です。

「ベビーサインって何?」

から始まり、

最後には、

「私も伝えていきたい」

というところまで進んでいきます。

もし今、

「何か新しいことを始めたい」

「今までの経験を誰かの役に立てたい」

「自分らしくできる仕事を見つけたい」

と思っているなら。

いきなり「講師になる」と決めなくてもいい。

まずは、

「こんな働き方があるんだ」

と知るところからでもいいと思います。

9月14日から、新しい講師育成プログラムが始まります。

この8日間が、あなたのこれからの働き方を考えるきっかけになったら嬉しいです。

【ベビーサイン講師育成プログラム詳細はこちら】

2026.08.18「ベビーサインの基礎講座ですか?」という質問をいただいて、改めて伝えたいこと。

先日、今回の「ベビーサインサポーター講座」について、こんなご質問をいただきました。

「これは資格ではないんですよね?
ベビーサインの基礎がわかるっていう理解で合っていますか?」

この質問をいただいて、

「あちゃー、私の発信では全然伝わってない・・・。」って反省したんです。

たしかに、講座の名前には
「ベビーサインサポーター講座」
と書いてあります。

そして、実際に講座の中ではベビーサインについても学びます。

でも。

今回、私が本当に届けたかったのは、
「ベビーサインの知識」だけではありません。(実際、そんな情報はネット上にあふれていますよね)

ベビーサインを入り口に、赤ちゃんを見る

私は20年以上、ベビーサインを伝えてきました。

その中で、たくさんの赤ちゃんとご家族に出会ってきました。

そして、長く続けてきたからこそ、だんだんと強く思うようになったことがあります。

それは、

赤ちゃんとのコミュニケーションを考えるとき、おしゃべりできない時期の大人の関わり方がカギだ!

ということ。

赤ちゃんは、おしゃべりできなくてもきっとなんかいろいろ伝えたいことあるんだろうな~くらいはきっと、多くの人が想像できると思うんです。

でも、じゃあ、どうやって大人が関わることが大切なのか?ってなると、「おしゃべりできない」っていう前提条件が邪魔をしませんか?

相手がおしゃべりできない赤ちゃんだと、分かっているんだろうけど、反応が「話し言葉」で返ってこないから
・なんとなくわかった風に相手をしたり
・結局何をどうして欲しいのかがわからない毎日だったり



そうすると、

「早くおしゃべりしてくれないかな」
「話始めるまで待つしかないよね」

っという考えがもしかしたら、日々の育児を大変にしていないでしょうか?
専門職の方においては、そんな「話せない時期」を楽しめていない親御さんが周りにいませんか?

だから、ベビーサインも、発達や愛着についても学びます

今回の講座では、

ベビーサインの始め方だけを説明しているわけではありません。

なぜ赤ちゃんとの関わりが大切なのか。

2歳までに大切だと言われている「心の安定」とは何なのか。

赤ちゃんの「伝えたいのに伝えられない」というフラストレーションについて。

イヤイヤ期とベビーサインの関係。

ベビーサインと話し言葉の発達について。

「ベビーサインを使い続けたら、話さなくなるのでは?」

という疑問について。

そして、話し始めたあとにも続くベビーサインのメリットについて。

全8回を通して、こうしたことを一つずつ考えていきます。

つまり、

「ベビーサインを覚える講座」ではなく、
ベビーサインを入り口に「赤ちゃんを理解する視点」を学ぶ講座。

それが、今回私が作りたかったものです。

「資格」ではなくても、学ぶ意味がある

そして、もう一つ。

この講座は、ベビーサイン教室を開講するための資格を取得するための講座ではありません。

でも私は、専門職の方にとって、

資格にならない学びにも、大きな意味がある

と思っています。

保育士さんが、保育の中で赤ちゃんを見る視点を一つ増やす。

助産師さんが、退院するママにこれからの育児を楽しみにしてもらえるような声かけを一つ増やす。

子育て支援に関わる方が、保護者からの

「ベビーサインって、実際どうなんですか?」

という質問に、自分の言葉で答えられるようになる。

そんなふうに、今持っている専門知識に、もう一つ引き出しを増やす。

そのための講座です。

ベビーサインを通して、

「赤ちゃんって、こんなにいろんなことを考えているんだ」

「こんなことまで伝えようとしているんだ」

と、大人の側の見方が変わっていく。

「話始めるまで、待たずにこんなに楽しめることがあるんだ!」

を知ること。

そのことに、ベビーサインの大きな価値があると思っています。

だから今回、

「赤ちゃんを理解する専門職講座」

という言葉を、前面に出すことにしました。

正式名称は、

赤ちゃんを理解する専門職講座
(ベビーサインサポーター講座)

です。

赤ちゃんや保護者と関わる専門職の皆さんに、

今まで学んできた専門知識に加えて、

「赤ちゃんを見る、もう一つの視点」

を持っていただけたら。

そんな思いで作った8本です。


発売記念価格9,800円でお申し込みいただけるのは、8月20日まで

その後、一旦販売を終了し、再販は9月中旬以降を予定しています。そのときは通常価格12,800円での販売になります。

「ベビーサインって実際どうなんですか?」

そんな質問に、自信を持って答えられる専門職になりたい。

そう思ってくださる方に、ぜひ届いてほしい講座です。
(お申し込み時に記入できる紹介コードはpa0001でどうぞ)

2026.08.17歌っているだけなのに、こんなことまで?乳幼児の「歌」の中にある、ことばとやりとりの力

『3000万語の格差』を読みながら、私が「これ、面白いな」と思ったことの一つが、子ども向けの歌についての話でした。

本の中では、歌には、

  • 普段の会話ではあまり使わない言葉

  • 数に関する言葉や概念

  • 空間に関する言葉

  • 繰り返しやパターン

などが含まれていて、子どもがさまざまな言葉や概念に触れる機会になることが紹介されています。

でも、ここで誤解してほしくないのは、

「この歌を歌えば、○○の能力が伸びます!」

という話ではない、ということ。

むしろ私が面白いと思ったのは、

いつも何気なく歌っている歌の中に、実は子どもが言葉や概念に出会うきっかけが、たくさん隠れている。

ということなんです。

そして、そこに『3000万語の格差』で紹介されている3つのTを重ねると、さらに面白くなります。


まずは「3つのT」をおさらい

3つのTとは、

Tune In

子どもが今、何に興味を向けているのかに気づくこと。

Talk More

子どもが興味を持っていることについて、言葉を少し広げていくこと。

Take Turns

大人が一方的に話すのではなく、子どもと交互にやりとりすること。

です。

これまでの記事でも書いてきましたが、これは「親が頑張って子どもに言葉を教えるための方法」ではありません。

むしろ、

子どもが今、楽しんでいることに大人も入っていく。

そのための考え方です。

そして、歌はこの3つのTが自然に起こりやすい遊びの一つなんです。


歌の中には「普段と違う言葉」がいっぱい

たとえば、少し年齢が上がりますが、

♪たなばたさま

という歌があります。

「五色の短冊」
「笹の葉」
「軒端」

など、子どもとの普段の会話では、なかなか出てこない言葉があります。

でも、歌なら何度も繰り返し耳にします。

そして子どもが、

「たんざくってなに?」

と聞いてきたら、

「お願いごとを書く紙だよ」

と話を広げることができる。

歌が、新しい言葉との出会いになるわけです。


でも、もっと小さな子どもの歌にも「言葉の種」はある

では、0~2歳くらいの子どもが楽しむ歌ではどうでしょう?

私は、ここも面白いと思います。

たとえば、

♪魚がはねて

「はねる」
「くっつく」

といった、動作を表す言葉が出てきます。

しかも、歌いながら実際に身体を動かすことができます。

「ぴょーん!」

と手を動かしたり、

「頭にくっついた!」

と頭を触ったり。

すると、

言葉を「聞く」だけではなく、身体を動かしながら経験する

ことができます。


「かえるのうた」には、「聞こえる」がある

♪かえるのうた

も、赤ちゃんと一緒に楽しみやすい歌ですよね。

ここで面白いのが、

「聞こえてくるよ」

という言葉。

「聞こえる」って、普段の会話では意外と意識して使っていない言葉かもしれません。

外から音が聞こえてきたときに、

「何か聞こえるね」

「カエルさんかな?」

と、歌をきっかけに**「聞く」という感覚に言葉を添える**こともできます。


「大きな栗の木の下で」には、空間の言葉

そして、みんながよく知っている、

♪大きな栗の木の下で

ここには、

「大きな」
「木」
「下」

という言葉があります。

特に「下」というのは、空間的な位置関係を表す言葉。

歌いながら実際に身体を動かして、

「上!」
「下!」

と遊んでみることもできます。

「木の下にいるね」

と、実際に公園などで木を見つけたときに思い出すこともできます。

これも、

歌の言葉が、実際の体験につながっていく

という面白さがあります。


「幸せなら手をたたこう」は、パターンの宝庫

そして、本の中で紹介されている「BINGO」のように、同じパターンを繰り返しながら、一部分が変わっていく歌

日本で親しみのある歌なら、

♪幸せなら手をたたこう

が分かりやすいですね。

「手をたたこう」

「足ならそう」

「肩たたこう」

と、基本の形は同じまま、動作が変わっていきます。

子どもは、

「次は何かな?」

と予測しながら参加できます。

これは、ただ歌詞を覚えるだけではなく、

「同じところ」と「変わるところ」に気づく

という楽しさがあります。


わらべ歌にも、こんな「やりとり」がいっぱい

さらに、わらべ歌には、親子や子ども同士で交互に動く・まねする・繰り返すものがたくさんあります。

たとえば、

♪おちゃらかほい

相手の動きを見て、自分も動く。

大人がやったら子どもがまねする。

今度は子どもが動いて、大人がまねする。

これはまさに、

Take Turns

です。

歌っているだけに見えても、実際には、

「相手を見る」
「相手の動きを予測する」
「自分の番を待つ」
「相手に合わせて動く」

という、たくさんのやりとりが起こっています。


だから、歌は「3つのT」と相性がいい

ここまで見てくると、歌の中に3つのTが自然に入っていることが分かります。

🎵 Tune In

子どもが歌を聴いている。

手を動かしている。

身体を揺らしている。

笑っている。

まずは、そんな子どもの反応を見る


🎵 Talk More

「大きな栗だね」

「木の下だね」

「ぴょーんって跳ねたね」

「何が聞こえるかな?」

と、子どもが今楽しんでいることに言葉を添える。


🎵 Take Turns

大人が歌う。

子どもが動く。

大人がまねする。

子どもがまた返す。

歌そのものが、親子のやりとりになります。


「歌を聞かせる」から「一緒に歌う」へ

ここは、けっこう大きな違いです。

「子どものために、良い歌を聞かせなきゃ」

と思う必要はありません。

もちろん、歌を聴くことも楽しい。

でも、3つのTという視点で見ると、

大人と子どもが一緒に歌う。

そこに、もっとたくさんのことが起こります。

子どもの表情を見る。

子どもの動きをまねする。

子どもの声に返事をする。

歌詞に出てきたものを実際に探してみる。

歌に合わせてベビーサインをする。

そうすると、歌が**「親子のコミュニケーションの道具」**になっていくんです。


そして、これは私たちが教室でやってきたこと

ここまで読んで、

「これ、まさにベビーサイン教室でやっていること!」

と思った方もいるかもしれません。

実は、ベビーサイン協会のお教室では、以前からみんながよく知っているわらべ歌や童謡のメロディーを使った手遊び歌を楽しんでいます。

たとえば、

「大きな栗の木の下で」のメロディーで

♪大きな おやまの てっぺんに♪
という歌詞に変えて、【山】のベビーサインを入れて歌います。また、

「はとぽっぽ」のメロディーで

グーとパーだけでできるベビーサインを4つ紹介しながら歌う替え歌もあります。

お教室のネタを考えなくちゃいけなかった20数年前、作曲する才能がなかった私は、みんなが聞いたことのあるメロディーに、使えそうなベビーサインを盛り込んだ歌詞をあてて、替え歌を何曲も作ったんです。

だから、

「新しい歌を覚えなきゃ」

ではありません。

「あ、このメロディー知ってる!」

というところから、一緒に参加できます。

そして、歌詞に合わせてベビーサインを使います。


歌の中で、サインを何度も楽しむ

ベビーサインって、

「このサインを覚えましょう!」

と練習するだけだと、ちょっと味気ないですよね。

でも歌になると違います。

同じ歌を何度も歌う。

同じサインが何度も出てくる。

大人がベビーサインをする。

赤ちゃんが見ている。

今度は赤ちゃんが手を動かしてみる。

そして、

「もう一回!」

と、また歌う。

こうして、ベビーサインそのものだけではなく、

「伝える → 受け取ってもらう → また返ってくる」

というやりとりを、繰り返し楽しむことができます。


教室だけで終わらせない

そして、私たちが大切にしているのが、

ご家庭でも同じように楽しめること。

教室で何度も繰り返し楽しんだ手遊び歌は、ご家庭でも楽しめるようにダウンロードできる形にしています。

教室では先生と一緒に。

お家ではママやパパと一緒に。

同じ歌を繰り返し楽しむ。

これって、実はとても大切なことだと思うんです。

赤ちゃんは、同じ歌を何度も聞くことで、

「あ、この歌知ってる!」

という感覚を持つようになります。

そして、ある日突然、

今まで見ているだけだった赤ちゃんが、

歌に合わせて手を動かしたり、

ベビーサインをしてみたりする。

そんな瞬間がやってくることがあります。


音楽は「脳を育てる魔法」ではありません

ここまで読むと、

「じゃあ、音楽ってやっぱり脳にいいの?」

と思うかもしれません。

音楽活動と子どもの認知・実行機能については、実際に研究されています。

2025年の系統的レビュー・メタ分析では、3~6歳の子どもを対象とした研究をまとめ、音楽トレーニングを経験した子どもは、そうでない子どもに比べて、抑制制御・ワーキングメモリ・認知的柔軟性といった実行機能に良い変化が見られたと報告されています。

ただし、これは、

「家で歌を歌えば、実行機能が伸びる」

という研究ではありません。

研究で調べられているのは、一定期間、継続的に音楽トレーニングを行った子どもたち。

つまり、

音楽を聴かせるだけで、子どもの能力が自動的に伸びる

という話ではないんです。

むしろ、音楽を使った活動の中には、

「集中する」
「覚える」
「音やリズムに合わせる」
「身体をコントロールする」
「相手の動きを見る」
「自分の番を待つ」

といった、さまざまな経験が含まれている。

だからこそ、研究の対象になるほど興味深い活動なんですね。


「何を教えるか」より、「一緒に何をするか」

そして、『3000万語の格差』の3つのTと、音楽の話を重ねてみると、私はこんなふうに感じます。

音楽そのものが魔法なのではありません。

歌を通して、大人と子どもが一緒に同じものを見たり、聞いたり、動いたり、笑ったりする。

そこに価値がある。

だから、

「この歌で○○を教えよう」

と考えるより、

「この歌、子どもはどんなところが好きなんだろう?」

と見てみる。

そして、子どもが反応したところに、

ちょっと言葉を足してみる。

ちょっとベビーサインを添えてみる。

ちょっと一緒に動いてみる。

それだけでいい。


今日の歌を、ちょっと違う目で見てみる

いつも歌っている歌を、今日はこんなふうに見てみませんか?

「この歌には、どんな言葉が出てくる?」

「どんな動きをする?」

「同じパターンはある?」

「子どもは、どこで一番楽しそうにする?」

そして、

「今、この子は私に何を返してくれている?」

と。

そうやって見てみると、

「ただ歌っているだけ」

だった時間が、

親子のやりとりがいっぱい詰まった時間

に見えてくるかもしれません。

歌う。

動く。

笑う。

ベビーサインする。

また歌う。

そんな何気ない繰り返しの中にも、子どもの発達を支える小さな種が、たくさん隠れているのです。

そして私は、ベビーサイン教室で長年やってきた**「みんなが知っている歌×ベビーサイン」**も、そんな親子のやりとりを生み出す一つの方法だと思っています。

教えるための歌ではなく、一緒に楽しむための歌。

それが、赤ちゃんとのコミュニケーションを豊かにしてくれるのではないでしょうか。


参考にした研究・書籍

  • ダナ・サスキンド『3000万語の格差―赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の「話しかけ」』明石書店

  • 3~6歳児の音楽トレーニングと実行機能に関する2025年の系統的レビュー・メタ分析

  • 乳幼児期の音楽的な親子のやりとりに関する研究

2026.08.12「ごっこ遊び」は、いつから始まる?

これまで3回の記事で、

Tune In(チューン・イン)
Talk More(トーク・モア)
Take Turns(テイク・ターンズ)

という「3つのT」が、特別な教育プログラムとしてではなく、毎日の遊びや生活の中で使える考え方だというお話をしましたね。

今回は、その中でもこの本「3000万語の格差」に登場する「ごっこ遊び」に注目してみたいと思います。

「ごっこ遊び」と聞くと、

「2歳くらいになったら、おままごとをするようになる」

そんなイメージがないですか?

でも、ここにたどり付くまでの発達の過程をちょっと一緒に見ていきましょう。


ごっこ遊びは、いきなり始まらない

赤ちゃんの遊びは、最初はとてもシンプルです。

触る。
握る。
振る。
口に入れる。
落とす。

「これをやったら、こうなった!」

そんな自分と物との関係を確かめるような遊びから始まります。

そして、少しずつ、

「大人がやっていることをまねする」

という行動が増えてきます。

たとえば、

おもちゃの電話を耳に当てる。
スプーンを口に運ぶ。
ぬいぐるみに何かを食べさせる。

こうした行動が、やがて「ごっこ遊び」へとつながっていきます。


大体の目安はこんな感じ

もちろん、子どもの発達には個人差があります。

なので「○か月になったら必ずこうなる」というものではありませんが、ざっくり発達の流れを見ると……

👶 1歳前後

「まねっこ」の時期

大人の行動をよく見て、まねすることが増えてきます。

電話を耳に当てる。
コップを口に持っていく。
人形を抱っこする。

まだ「ごっこ遊び」と呼ぶにはシンプルでも、ここには大切な土台があります。


👶 1歳半ごろ~

「~のつもり」が少しずつ始まる

研究では、pretend play(ごっこ遊び)は18か月前後から多くの子どもに見られるようになります。

たとえば、

ぬいぐるみにご飯を食べさせる。
人形を寝かせる。
おもちゃの電話で「もしもし」をする。

など。

「自分が食べる」だけではなく、誰かに食べさせる

「自分が寝る」だけではなく、人形を寝かせる

ここには、「見立てる」「誰かの立場になって行動する」という、少し高度な認知の発達が見えてきます。


👶 2歳ごろ~

遊びが少しずつ「つながる」

一つの行動だけではなく、

「人形がお腹すいた」

「ご飯を作る」

「食べさせる」

「お茶を飲ませる」

「おやすみ」

というように、複数の行動がつながっていきます。

日本の幼児を対象にした象徴遊びの研究でも、12~17か月、18~23か月、24~29か月と年齢が上がるにつれて、遊びの内容がより複雑になっていくことが示されています。


👧 3歳ごろ~

「役割」がどんどん増えてくる

「ママ」「お医者さん」「お店屋さん」「先生」など、誰かになりきって遊ぶことも増えてきます。

自分だけの世界だったごっこ遊びが、

「私はお母さんね」
「じゃあ、あなたは赤ちゃん」
「ご飯できましたよ」

というように、人とのやりとりを含んだ遊びへと広がっていきます。
保育園でお店屋さんごっこを楽しんでいた子どもたちを思い出しますね~

もちろん、ここにも個人差があります。

だから、

「まだごっこ遊びをしない!」

と焦る必要はありません。

発達は階段のようにきっちり進むものではなく、いろいろな遊び方が重なりながら少しずつ複雑になっていきます。


そして、ここで「3つのT」が登場します

ここが、今回私が一番おもしろいと思ったところ。

子どものごっこ遊びを見つけたら、大人はどうする?

Tune In

まず、子どもが何をしているのかを見る。

たとえば、子どもがぬいぐるみにスプーンを持っていっている。

「あ、今この子にご飯を食べさせているんだな」

と気づく。

ここで大人が、

「これは何?」「何してるの?」

と質問攻めにする必要はありません。

まずは、子どもの世界に入る。


Talk More

子どもの遊びに、少しだけ言葉を足してみる。

「赤ちゃん、おなかすいたのかな」

「はい、どうぞ~」

「おいしいね」

子どもが作っている世界を壊さないように、言葉を添えていく。


Take Turns

そして、やりとりを続ける。

子どもが食べさせる。

大人が「おいしい!」と言う。

子どもがまた食べさせる。

今度は大人が、

「次は何にする?」

と待ってみる。

子どもが何かをする。

大人が応える。

また子どもが返す。

これがTake Turns。


「ごっこ遊びを教える」のではなく、「ごっこ遊びに入る」

ここ、すごく大事だと思うんです。

大人が、

「こうやって遊ぶんだよ」

と教え込む必要はありません。

子どもが作っている世界に、

「私も入っていい?」

という気持ちで入っていく。

すると、ごっこ遊びそのものが、

コミュニケーションの場

になります。

本の中に、

「ごっこ遊びに保護者を招き入れることで、子どもは自分でリードする『ふり』をしつつ、保護者とのやりとりから学んでいる」

という、とても面白い説明があります。

これ、まさに「3つのT」なんですよね。


そして、これってベビーサインにもつながる

私はここを読んでいて、

「これ、ベビーサインをしている親子にも同じことが言えるな」

と思いました。

ベビーサインも、

「今日はこのサインを教えよう!」

と大人が主導するより、

赤ちゃんが今、何を見ている?
何を伝えようとしている?
何に興味を持っている?

そこに大人が気づくことから始まります。

それがTune In

そして、赤ちゃんが見ているものについて

「これは、りんごだね」
「もっと欲しい?」
「おいしいね」

と、言葉やベビーサインを添える。

それがTalk More

赤ちゃんからすぐにベビーサインが返ってこなくても、まずは表情、声、動きなどで返してくれたら、それを受け取ってまた返す。

それがTake Turns

だから、「3つのT」は単に「たくさん話しかけましょう」という話ではないんですよね。

子どもと一緒に、ひとつの世界をつくっていく。

そのためのヒントなんだと思います。


🎵そして、もう一つ面白いのが「音楽」

今回の本のページでは、ごっこ遊びだけではなく、音楽と3つのTについても紹介されています。

歌うこと。

踊ること。

手拍子すること。

これも全部、子どもとの「やりとり」になる。

しかも音楽には、言葉だけではなく、リズム、身体の動き、パターン、模倣など、子どもの発達につながるいろいろな要素があります。

歌うだけでも、3つのTはできる。

これ、面白くないですか?

次回はこの**「3つのT×音楽」**を、もう少し掘り下げてみたいと思います。


参考にした研究

  • Nielsen, M. et al. (2004). Pretend play, mirror self-recognition and imitation: a longitudinal investigation through the second year. Infant Behavior and Development, 27(3), 342–365.

  • 藤野博(2002)「健常幼児における象徴遊びの発達―象徴遊びテストによる調査―」『音声言語医学』43(1), 21–29. DOI: 10.5112/jjlp.43.21.

※発達の月齢はあくまで大まかな目安です。CDCも、発達のマイルストーンは「多くの子ども(75%以上)がその年齢までにできること」を示す目安であり、標準化された発達スクリーニングの代わりではないと説明しています。

2026.08.07「話す」より大切なことがありました。3つ目のT「Take Turns」が教えてくれること

これまで2回にわたり、『3000万語の格差』で紹介されている3つのTのうち、「Tune In」と「Talk More」をご紹介してきました。

  • Tune In … 子どもの世界に意識を向けること

  • Talk More … 子どもの興味に寄り添って言葉を届けること

そして、最後のTがTake Turnsです。

直訳すると、「順番にやり取りをする」。

一見すると、とても当たり前のことのように思えます。

でも、この「やり取り」こそが、子どもの脳の発達にとって、とても大切な意味をもっているのです。


コミュニケーションは「キャッチボール」

大人同士の会話を思い浮かべてみてください。

一方的に一人だけが話し続ける会話は、あまり心地よいものではありませんよね。

相手が話し、

自分が聞き、

また自分が話し、

相手が応える。

こうしたキャッチボールがあるからこそ、「会話」になります。

赤ちゃんとのコミュニケーションも同じです。

もちろん、赤ちゃんはまだ言葉を話せません。

でも、よく見てみると、赤ちゃんは毎日たくさんの「ボール」を投げています。

視線。

表情。

笑顔。

指差し。

声(クーイングや喃語)。

身振り。

泣くことさえ、大切なメッセージです。

Take Turnsとは、それらを受け取り、「ちゃんと届いたよ」と返すことなのです。


「応答」が脳を育てる

近年の乳幼児発達研究では、子どもが発信し、大人が応答するやり取りが、脳の神経回路を育てることが繰り返し示されています。

ハーバード大学が提唱するServe and Returnも、その代表的な考え方です。

子どもが「サーブ(発信)」し、大人が「リターン(応答)」する。

この繰り返しによって、脳の神経回路は強く結びついていきます。

つまり、大切なのは「話す量」ではなく、「やり取りの回数」なのです。


まだ言葉がなくても、やり取りはできる

ここで、多くの方がこんな疑問をもつかもしれません。

「でも、まだ言葉を話せない赤ちゃんとは、どうやってやり取りをするの?」

実は、赤ちゃんは言葉を話し始める前から、自分の気持ちや興味を一生懸命伝えています。

例えば、

コップを見つめる。

犬を指差す。

もっと遊びたくて両手を伸ばす。

「もう一回!」と言いたくて笑顔になる。

そんな一つひとつのサインを大人が受け取り、応えることで、やり取りは生まれます。

そして、その「伝わった」という経験が、次のコミュニケーションへの意欲につながっていきます。


ベビーサインも「Take Turns」を育てる方法のひとつ

私は20年以上、ベビーサインに携わってきました。

ベビーサインというと、「手話を教えるもの」というイメージをもたれることがあります。

でも、私が一番大切だと思っているのは、そこではありません。

ベビーサインの価値は、やり取りが増えることにあります。

まず、日々の生活の中で、ベビーサインを添えながら大人が語りかけます。すると、赤ちゃんは次第に、その手の動きに意味があることを理解して、やがて、自分でベビーサインを使い始めます。

例えば、毎日の授乳の際に
「今からミルク飲むよ」「おっぱい飲もうね」
と言いながら、【おっぱい・ミルク】のベビーサインを見せる。

画像

すると、ある日、赤ちゃんはお腹がすいたら、泣いたり愚図ったりする代わりに【おっぱい】のベビーサインで教えてくれるようになります。

それを大人が
「あーおっぱい飲みたいんだね。ちょっと待ってね」
とベビーサインと言葉で受け止める。

こうして、赤ちゃんは「伝わった!」と感じ、また伝えようとする。

この繰り返しは、まさにTake Turnsそのものです。

だから私は、『3000万語の格差』を読みながら、「ベビーサインは、このTake Turnsを自然に増やすコミュニケーションなのだ」と、あらためて感じました。


「話せるようになる前」から、会話は始まっている

私たちは、「言葉が出たら会話が始まる」と考えがちです。

でも、本当にそうでしょうか。

赤ちゃんは、生まれたその日から、大人と関わろうとしています。

視線を送り、

表情を見つめ、

声を聞き分け、

笑顔を返す。

その一つひとつに大人が応えることで、赤ちゃんは「コミュニケーションは楽しい」「伝えれば応えてもらえる」ということを学んでいきます。
そして、そこに、ベビーサインがあることで、赤ちゃん自身が想いを発信することができるようになるんです。やり取りをわかりやすくスタートできる!

言葉は、そのずっと先に育ってくるものです。


おわりに

『3000万語の格差』というタイトルからは、「どれだけ多く話しかけるか」がテーマのように思えます。

でも、3つのTを読み進めて感じたのは、そうではありませんでした。

まず子どもの世界に入る(Tune In)。

その世界を言葉で豊かにする(Talk More)。

そして、お互いにやり取りを重ねる(Take Turns)。

この3つがそろって初めて、「豊かな言葉環境」が生まれるのです。

そして、その考え方は、近年の乳幼児発達研究が示している「応答的なコミュニケーション」の重要性とも重なっています。

「3000万語」という数字だけでは見えてこない、本当に大切なメッセージは、ここにあるのではないでしょうか。

2026.08.05「たくさん話しかければいい」は誤解? 2つ目のT「Talk More」が本当に伝えたいこと

「赤ちゃんには、たくさん話しかけましょう。」

子育て中、一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。

画像

『3000万語の格差』というタイトルからも、「話す量」が大切なのだと思われがちです。

でも、ダナ・サスキンド博士が3つのTの2つ目として紹介するTalk Moreは、単純に言葉数を増やすことではありません。

大切なのは、「どんな言葉を、いつ届けるか」。

その前提には、前回ご紹介したTune Inがあります。


Talk Moreは、Tune Inがあって初めて意味をもつ

子どもが積み木に夢中になっているとします。

そのときに、

「今日はお天気がいいね。」

「スーパーで何を買おうかな。」

と話しかけても、子どもの脳にはあまり届きません。

一方で、

「すごく高く積めたね。」

「次はどこに置く?ここ?」

「これは、青い積み木だね。」

そんな言葉ならどうでしょう。

子どもが見ているもの、感じていることに寄り添った言葉は、その子の世界とつながっています。

だからこそ、意味のある言葉として届くのです。

Talk Moreとは、「たくさん話すこと」ではなく、子どもの世界を言葉で豊かにしていくことなのです。


「実況中継」が語彙を育てる

乳幼児は、自分が体験していることと結びついた言葉を覚えやすいことが知られています。

例えば、公園で、犬を見かけたら、

「わあ、大きな犬だね。」

「しっぽを振っているね。」

「わっ、走ったよ。早いね~」

食事中だったら、

「これはね、人参。」

「シャキシャキするね。」

「甘いね。おいしいね。」

こんな感じ。これは単なる説明ではありません。

子どもが今まさに体験している世界に、大人が一緒に入って、言葉で表現してあげてるんです。

語彙は、辞書のように暗記して増えるものではありません。
私たちがかつて、英語を覚えるときにも、ただ、単語を丸暗記するよりも、
実体験を通した方が、ずっとわかりやすく、身につきましたよね。

子どもの言葉も、経験と言葉が結びつくことで、少しずつ育っていくんです。


「赤ちゃん言葉」は、幼稚だから使うのではない

本の中で印象的だったのが、「赤ちゃん向けの話し言葉」についての説明です。

高めの声。

ゆっくりした話し方。

抑揚のあるリズム。

短く、繰り返しの多い表現。

「お母さん語」とか、「マザリーズ」と言われるこの話し方は、大人同士ではあまり使わない話し方ですが、世界中の文化で共通して見られることが知られています。

これは、赤ちゃんを子ども扱いしているからではありません。

赤ちゃんが言葉に注意を向けやすくなるように、自然と工夫された話し方なのです。

つまり、「赤ちゃん言葉」は目的ではなく、子どもに言葉を届けるための手段なのです。


話す量より、「やり取り」の中で話すこと

Talk Moreを読んでいて、私が改めて感じたのは、

言葉は、関係の中で育つ。

ということでした。

大人が一方的に説明するだけではなく、

子どもの表情を見て、

反応を待ち、

また言葉を返す。

そんなやり取りの中で、言葉は生きた意味を持ち始めます。

だからTalk Moreは、「話すこと」ではなく、「つながること」なのだと思います。


私が感じたこと

「3000万語の格差」というタイトルだけを見ると、「量」が重要なのだと思ってしまいます。

でも、本を読み進めるほどに感じるのは、サスキンド博士が伝えたかったのは量ではなく質だということです。

もちろん、言葉が豊かな環境は大切です。

でも、その言葉は子どもの世界と結びついていなければ、本当の意味では豊かな言葉環境とは言えません。

まずTune Inで子どもの世界に入る。

そしてTalk Moreで、その世界を言葉で豊かにする。

この2つは、切り離せないものなのだと感じました。


次回は「Take Turns」

最後のTはTake Turns

直訳すると「順番にやり取りする」。

一見すると当たり前のことのようですが、この「やり取り」こそが、子どもの脳の発達に大きな影響を与えることが、多くの研究で示されています。

そして私は、この章を読みながら何度もあるコミュニケーション方法を思い浮かべました。

それは、「まだ言葉を話せない赤ちゃん」とも自然にやり取りを生み出せる方法です。みんな分かってますよね?!

その話は、次回ご紹介したいと思います。

2026.08.04脳を育てる最初のT「Tune In」とは?

「子どもの興味に合わせましょう。」

子育てや保育の世界では、よく耳にする言葉です。

でも、『3000万語の格差』(ダナ・サスキンド著)でサスキンド博士が伝えたかったのは、「子どもに合わせる」ということではありません。

「子どもの世界に入ること」。

これこそが、3つのTの最初のT、「Tune In」の本当の意味なのです。


Tune Inとは「子どもの世界に周波数を合わせること」

「Tune In」は、ラジオのチューニングと同じ言葉です。

周波数をぴったり合わせると、雑音が消え、音がクリアに聞こえます。

子どもとのコミュニケーションも同じです。

大人が自分の伝えたいことを話すのではなく、まずは子どもが今、何を見ているのか、何に夢中なのか、その世界に親の意識をチューニングする。

それがTune Inです。


絵本を読むより、大切なこと

本の中で、とても印象的な場面が紹介されています。

親は「絵本を読んであげたい」と思っています。

ところが子どもは、床で積み木遊びに夢中です。

ここで、

「さあ、今から絵本読もう!」

と積み木をやめさせることもできます。

もちろん、それが悪いわけではありません。

でも、サスキンド博士は別の選択肢を示します。

親が子どもの隣に座り、

「すごいね、高く積めたね。」

「次はどこに置くの?」

と、一緒に積み木の世界へ入っていく。

子どもが望んでいるのは、

「今、私が見ている世界を、一緒に見てほしい。」

ということなのです。


たった5分でも脳は育つ

本には、こんな一節があります。

子どもが集中している世界の中で保護者が一緒に遊べば、たとえそれが5分で終わったとしても、脳の発達には役立つ!

なぜでしょうか。

子どもは、大人のように自由に注意を切り替えることが得意ではありません。

夢中になっている積み木から、急に絵本へ。

遊びから食事へ。

その切り替えには、大きなエネルギーが必要なんですって!(そんな、切り替えにエネルギーがいるなんて、考えてみたこともなかったわ~)

だからこそ、大人が子どもの世界へ入ることは、子どもの脳に余計な負担をかけずにコミュニケーションを深める方法でもあるのです。


Tune Inは「観察」から始まる

サスキンド博士は、Tune Inを支える土台として、

  • 観察する

  • 解釈する

  • 行動する

という3つのステップを紹介しています。

まず子どもをよく見る。

何を見ているのかな。

何を伝えたいのかな。

そう考えてから言葉をかけたり、一緒に遊んだりする。

これは単なる「声かけのコツ」ではありません。

子どもの発信に応答する姿勢そのものです。


最新の乳幼児発達研究ともつながる

この考え方を読んで、私はすぐにいくつかの研究が頭に浮かびました。

ハーバード大学が提唱するServe and Return

子どもの発信に大人が応答することが、脳の神経回路を育てるという考え方です。

また、**共同注意(Joint Attention)**の研究でも、大人と子どもが同じものに注意を向ける経験が、言葉や社会性の発達につながることが知られています。

サスキンド博士の「Tune In」は、こうした研究成果を、誰もが家庭で実践できる形にしたものなのだと感じました。


私が感じたこと

この章を読んでいて、一番印象に残ったのは、

「子どもに何を教えるか」よりも、「子どもが今見ている世界を、大人も一緒に見ること」が先なのだ

ということでした。

大人は、つい「次はこれをしよう」「これを覚えてほしい」と考えてしまいます。

でも子どもの脳は、興味をもった世界の中でこそ、もっともよく学びます。

だから、まずは大人が子どもの世界へ入る。

そこから言葉も、学びも、信頼関係も育っていくのです。

あーーーすべてベビーサインにつながってわ!


次回は「Talk More」を読み解きます

「3000万語の格差」というタイトルから、多くの人は「たくさん話しかけること」が大切だと思うかもしれません。

でも、サスキンド博士がいうTalk Moreは、単に話す量を増やすことではありません。

「どんな言葉を、どんなタイミングで届けるのか」。

そこにも、乳幼児発達の研究に裏づけられた大切な考え方がありました。

次回は、2つ目のT「Talk More」を一緒に読み解いていきたいと思います。

2026.07.30「3000万語の格差」は、本当に「たくさん話しかけること」で解決なの?

「赤ちゃんには、たくさん話しかけましょう。」

子育てをしていると、一度は耳にしたことがある言葉ですよね。

その背景には、「3000万語の格差」という有名な研究があります。

私は以前からこの研究の名前は知っていましたが、あらためて、ダナ・サスキンド博士の著書『3000万語の格差』をじっくり読み返してみました。

画像

「3000万語の格差」とは?

この本のベースになっているのは、1995年にベティ・ハート氏とトッド・リズリー氏が発表した研究です。

研究では、乳幼児期の家庭での言葉の環境を長期間観察し、子どもが耳にする言葉の量には家庭によって大きな差があること、そして、その違いが後の語彙や学力と関連していることが報告されました。

この研究は「3000万語の格差」として広く知られ、世界中で乳幼児期の言葉かけの重要性が語られるきっかけとなりました。

もちろん、その後の研究では「3000万語」という数字自体には議論もあります。しかし、乳幼児期の豊かな言語環境が子どもの発達にとって重要であるという点は、多くの研究で支持されています。


著者は、小児人工内耳外科医

この本の著者であるダナ・サスキンド博士は、小児人工内耳外科医です。

難聴の子どもたちに人工内耳の手術を行う中で、同じように手術を受けても、その後の言葉の育ちには大きな違いがあることに気づきました。

その違いを生み出していたのは、手術そのものではなく、家庭で交わされる日々のコミュニケーションだったのです。

この経験からサスキンド博士は、脳科学や発達心理学の研究をもとに、「家庭でできること」をまとめたプログラムを作り、この本を書きました。


「たくさん話しかけましょう」だけではなかった

正直に言うと、「赤ちゃんにたくさん話しかけることの大切さ」が書かれている本なのだろうと思っていたんですが、違ったんですよ。というかそれ以上に面白いことがたくさん載っていました。

まず、今回の記事で書きたいのは第5章で紹介される「3つのT」の話。

サスキンド博士が伝えたかったのは、「話しかける量」を単純に増やすことではありませんでした。

子どもの脳を育てるために大切なのは、次の3つだと言います。

  • Tune In(チューン・イン)
    子どもに意識を向け、その子が何に興味をもち、何を伝えようとしているのかに気づくこと。

  • Talk More(トーク・モア)
    子どもの興味や体験に寄り添いながら、豊かな言葉で語りかけること。

  • Take Turns(テイク・ターンズ)
    一方的に話すのではなく、子どもとのやり取りを繰り返すこと。

この3つを見た瞬間、「これは乳幼児発達の最新研究ともつながっている」と感じました。


この3つは、今の研究でも注目されている

近年の乳幼児発達研究では、

  • ハーバード大学が提唱する「Serve and Return(サーブ&リターン)」

  • 応答的な養育(Responsive Parenting)

  • 共同注意(Joint Attention)

など、「大人が子どもの発信に気づき、それに応えるやり取り」が、脳や言葉、社会性の発達を支えることが数多く報告されています。

サスキンド博士の「3つのT」は、それらの研究とも重なる考え方なのだと感じました。


次回は、「Tune In」を深掘りします

私はこれまで、「Tune In」とは「子どもの興味に合わせること」だと思っていました。

でも、本を読み進めると、それだけではありませんでした。

サスキンド博士が伝えたかった「Tune In」は、もっと深く、赤ちゃんとのコミュニケーションの土台になる考え方だったのです。

次回は、この最初のTである**「Tune In」**について、本の内容と乳幼児発達研究を交えながら、詳しくご紹介したいと思います。