2025.12.03一人目だからこそプレッシャー? 親の“期待”が子どもに与えること — 科学と、やさしい対処法
こどもを育てていると、特に一人目のときは「いい子に育てたい」「失敗させたくない」という気持ちが強くなりませんか?
実は私も、息子を育てる中で、「ベビーサイン協会の代表の子ども」ってどこかで見られてるんじゃないかって、気になっていた時期がありました。今日は、あの頃の自分が知ってたら良かったな~って事も含めながら、その“期待のかけ方”が、知らぬ間に子どもの心と脳に影響を与えることがある、という話を書いてみました。
1) 親の期待は“投影”になりやすい
心理学では、親が自分の願望や不安を子どもに重ねることを「投影(projection)」や家族システム理論での「family projection process」と表現します。
たとえば「お兄ちゃんなんだからしっかりしてね」「お姉ちゃんはもっと我慢できるでしょ」といった何気ない言葉も、子どもにとっては「期待に応えなければ愛されないかも」と感じるきっかけになるんですって。
2) 「期待が大きすぎる」と脳にも影響が出る — ストレスと学び
脳科学の視点では、子どもの脳は「安心感」があるときに前頭前皮質(考える力や自己コントロール)や海馬(記憶や学習)をよく働かせます。一方で、慢性的に強いストレス(高いコルチゾールなど)は、これらの領域の働きを妨げ、学びや挑戦を妨げることが示されているんです。つまり、プレッシャーや過度の期待は「学びに向かう気持ち」を萎えさせるリスクがあるんです。
実験やレビューでも、学習時のストレスは記憶の取得や柔軟な学習(新しいことを試す)を阻害することが報告されています。
3) 一人目(長子)には“達成志向”が出やすい — でもリスクも
多くの研究は、長子(firstborn)が幼少期〜学業面で有利になる傾向(親の注意が集中する、責任感が育つ)があることを示しています。一方で、完璧主義や不安傾向が出やすいという報告もあります。
つまり「一人目だから責任感が強い」「よくがんばる」一方で、「失敗が怖い」「完璧にやらなきゃという自己評価」が育ちやすい、という二面性があるそうです。(でも、わが家の場合はそうでもなかったな~というのが実感です。なんだかほわーんとした息子だったので・・・)
4) 「条件付きの愛」は自己肯定感を揺らす
親の愛情やほめ言葉が「成績が良ければ」「お手伝いできたら」と条件付きで与えられると、子どもは「自分は条件を満たしたときだけ価値がある」と感じやすくなります。心理学ではこれを「親の条件付け(parental conditional regard)」と呼び、自己評価の揺らぎややる気の低下、完璧主義との結びつきが示されています。
5) じゃあ、親はどうすればいい?
ここからは具体的でやさしい対処法です。どれも「親が変わらなきゃ」と自分を責めるためのものではなく、日々の接し方で子どもが安心して挑戦できる環境をつくるためのアイデアです。それがしいては自立した手のかからない子になると私は思います。
・成果より「過程(がんばり)」をほめる
「できたね!」だけでなく「最後まで試してみたね」「考えたね」と過程を言葉にする。そうすると子どもは「失敗しても次がある」と感じやすくなります。(← はい、これ、私はあまりできませんでした・・・反省。できたじゃん!やるじゃん!ってよく言ってた記憶が)
・条件付きの愛ではなく“条件なしの承認”を示す
失敗しても、期待した結果にならなくても、「どんなあなたも大好きだよ」というメッセージで具体的に伝えましょう。もーそんな事する子、嫌いって言いたくなる気持ちもわかるんだけど、それだと、子どもを否定してしまうことになるんですよね・・・
・小さな安心体験を積み重ねる
アイコンタクト、語りかけ、スキンシップ(抱っこや歌、ふれあい遊びなど)は「安全基地」を作ります。安心の積み重ねが、前頭前皮質や海馬の健やかな発達を支えます。
・ベビーサインは「期待をかけずに/つながる」ためのシンプルな道具
ベビーサインは、言葉を待つあいだのコミュニケーションツールです。たとえば…
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「できた!」「できなかった!」の代わりに、今見ているものや感じていることを共有することで安心が伝わる。
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ベビーサインを通して、子どもの興味関心に気づくことができるので、親の期待を押しつけることを避けられる。
こうした小さなやり取りは、子どもに「伝えても受け止めてもらえる」という安心を育て、条件付きの承認(=やったら褒める/やらなかったら愛情が下がる)を避けるのに役立ちます。日々のかかわりを“言葉+手の動き”で豊かにする手段として、ベビーサインは親子の“安心の橋渡し”になります。
6) 親が自分の期待に気づくためのワンポイント
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「その期待は私のもの? 子どものためのもの?」と自問してみる。
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感情が高ぶったとき、まず深呼吸してから話す。
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「失敗しても大丈夫」を日常の中で繰り返して伝える(親自身も子どもの前で失敗してOK)。
以上、いかがでしたでしょうか?わが子たちはもう大きくなってしまったので、今更後悔もありませんが、今子育て中の方に何か学びがあると嬉しいです。
ベビーサインに興味を持ってくださったらこちら「ベビーサイン図鑑」をどうぞ。

2025.12.01臨床心理士が語る“ベビーサインが子どもの心を守る理由”──エリクソンの発達理論から考える
子どもの“心の土台づくり”、何から始めたらいいの?
「ベビーサイン図鑑」Gakken の購入者特典ダウンロードコラム=臨床心理士でベビーサイン講師である山本水香先生のコラムから、一部抜粋で以下お届けします。
子どもには「幸せに、心穏やかに育ってほしい」。
これはすべての親の願いですよね。
けれど、今の日本の子どもたちは、決してラクではない環境に置かれています。
文部科学省の調査(令和5年度)では、小・中学校の不登校児童生徒数は過去最多。中学生の6.7%、小学生でも2.1%が学校に行けない状態にあると報告されています。
「どうすれば、子どもの心は安定して育つの?」
そのヒントを、アメリカの発達心理学者エリク・エリクソンの“ライフサイクル論”から見てみましょう。
エリクソンが示した「人生の最初の3ステージ」
エリクソンは人生を8つのステージに区切り、それぞれに“発達課題”があると考えました。
そして、課題がクリアされるたび、心はしなやかさと強さを獲得していくというものです。
● 第1段階:乳児期(0〜1歳半)
発達課題:基本的信頼感
● 第2段階:幼児前期(1歳半〜3歳)
発達課題:自律性
● 第3段階:幼児後期(3〜5歳)
発達課題:積極性
(詳しくはコラムをご覧ください)
これらを一段ずつ積み上げることで、のちの人生でつまずいても、助けを求める力・立ち上がる力が育っていくのです。
ベビーサインは、この“心の土台づくり”をサポートする
では、親は具体的に何をすればいいのでしょうか?
実は、答えはとてもシンプルです。
「赤ちゃんとしっかり関わること」
でも、分かっていてもそれって具体的にどうしたら良いのか難しい。
そんなときこそベビーサインが役立ちます。
● ① アイコンタクト+尊重
ベビーサインは、赤ちゃんと向き合う時間を自然と増やします。
「あなたのことを大切に思っているよ」というメッセージは、
基本的信頼感 を育てる最強のコミュニケーションです。
● ② 赤ちゃんを信じて“待つ”時間
サインが返ってこなくても待つ経験は、
赤ちゃんが「伝わるまで頑張ってみる」力につながり、
自律性 を育てます。
● ③ コミュニケーションの楽しさ
ベビーサインで意思疎通ができると、
「言いたい!伝えたい!」「やってみたい!」がどんどん増えます。
これはまさに 積極性 の芽が育っている証拠です。
ベビーサインは、今だけではなく“未来の心”を育てる
赤ちゃんとの毎日を、未来につながる“心の土台づくり”の時間に。
そのためのヒントをたっぷり詰め込んだ
『ベビーサイン図鑑』(Gakken)そんな想いで作った一冊です。
赤ちゃんの心に寄り添う時間が、
あなたの育児をもっとあたたかいものにしてくれますように。

2025.11.28対人スキルが価値を上げる時代へ。デミングの研究とベビーサインの関係
世界の研究が示す「これから伸びるのは人間らしい力」
● 過去30年間で“社会的スキルが必要な仕事”は約12ポイント増えた
ハーバード大学の David Deming(デヴィッド・デミング) の有名な研究(2017)では、1980〜2012年の間で対人コミュニケーションが必要な仕事の割合が “約12%ポイント”増加したことが報告されています。
つまり、機械やAIに置き換えられない「人と関わる力」が、これからますます価値を持つということ!
● AI時代の求人では「人間らしいスキル」がさらに重要に
さらに2024年・2025年の新しい分析では、
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チームワーク
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レジリエンス(折れない心)
-
人との対話力
-
問題を自分で見つける力
などの「AIと補完し合うスキル」が、AI関連の職種以外でも賃金プレミアムが上昇していると明らかになっています。
● OECD(国際機関)も明確に
OECDの2023年〜2024年の報告書でも、
AI・デジタル時代ほど、社会性・感情調整・自己管理といったスキルが重要になる
と強調されています。
難しい話に聞こえる? でも、これ、子育てに直結してるんですよ!
ここまで読んで、そんな先の話、まだ関係ないわと思ったかもしれません。
でも本質はひとつ。
AIでは代替できない“人間らしい力”が、これから未来を生き抜く子どもを支えてくれる!
この“人間らしい力”こそが、
-
気持ちを伝える力
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相手を理解する力
-
自己肯定感
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意欲や集中力
など、まとめて 非認知力 と呼ばれるものです。
そして――
非認知力は、乳幼児期の家庭での関わりがいちばん伸ばしやすい。
これは多くの研究が示している事実でなんです。
じゃあ、家庭で何をすればいい?
→ それは、ベビーサイン!非認知力の土台づくりにピッタリなんです。
ベビーサインは「早く言葉を話させるためのテクニック」ではありません。
もっと深い、長期的な価値があります。
● 1. 自分の気持ちを“伝えられる”成功体験
言葉がまだ出ない時期でも、自分の気持ちを手で表現できる唯一の方法がベビーサイン。周りの大人に察してもらうのではなく、自分で伝える!この経験は自己効力感(できた!)につながります。
● 2. ママ・パパがすぐ反応してくれる=安心感の土台
泣いても愚図っても伝わらない・・・ではなく、ベビーサインは「伝えたら伝わった!」という双方向のコミュニケーション。これは愛着形成を豊かにし、情緒の安定につながります。
● 3. 共同注意(同じものを見る力)を育てる
デミングの研究が示す“人との関わりの力”の基盤は、乳児期の「共同注意」。ベビーサインを使うと、自然にこの力が育ちます。(ベビーサインをしている子は共同注意エピソードが多いという研究結果もあり!)
● 4. 親子のやりとりが増える=非認知力が爆発的に増える
非認知力は、会話・まなざし・やりとりの中で伸びます。
ベビーサインは、その回数を驚くほど増やしてくれます。
未来の社会を生きる子どもたちに必要なもの
AIがどんなに進化しても、人間らしい温かいコミュニケーションはなくなりません。むしろ、“人間としての力”を持っている人ほど価値が上がる時代
が来ています。
だからこそ、乳幼児期の今、親子でじっくり関わり、気持ちを伝え合う体験が一生の財産になる。
ベビーサインはまさにその入り口。あなたと赤ちゃんの毎日の中で、未来につながる力を育む方法です。
最後に
もし今、
「泣く理由がわからない…」
「もっと赤ちゃんと気持ちが通じたらいいのに」
と思っていたら、ベビーサインがその悩みを解決してくれますよ。
そしてベビーサインでのやり取りは同時に、
赤ちゃんの未来の力(非認知力)も育てている
という、とても価値ある時間になります。
ベビーサインの情報がぎゅっと詰まった1冊はこちら

2025.11.27幼児期に“お金以上に大切な投資”って?
― 母親が子どもと過ごす「時間」と「質」が、未来の力をつくる
子育ての情報を見ていると、つい「習いごと」「教材」「知育おもちゃ」など、“お金でできる投資”に目が向きがちですよね。もちろん、これらも子どもの経験を広げてくれます。
でも実は、幼児期にもっとも大きな影響を持つのは、親が子どもと過ごす「時間」と、その時間の「質」だと言われてるんですよ。
1. 乳幼児期は「発達のゴールデンタイム」
ノーベル賞経済学者ジェームズ・ヘックマンは、幼児期の親の関わりは、後の学力・社会性・自己肯定感に大きな影響を与えると示しています。(1つ前の記事参照)
さらに、幼児期の脳は1秒間に100万の神経回路がつながると言われ、「人とやりとりする経験」そのものが脳の土台を形づくる時期です。
だからこそ、目の前の子どもと向き合って過ごす時間が、長い目で見て「最大の投資」になるんです。
2. 母親の時間投資は、特に“幼い時期”に大きく効く
最近の統計では、幼児期(0〜5歳)の親子時間は以下のように報告されています(米国のデータ):
-
親が子どもと過ごす時間は 1日平均6.5時間
-
このうち、子どもに直接関わる時間(抱っこ、遊び、読み聞かせなど)は、母親で 約2.7時間/日、父親で 約1.6時間/日 (Bureau of Labor Statistics, 2022)
母親の関わりは子どもが低年齢のうちに多く、成長に伴い徐々に減る傾向があります。これは「幼い時期の関わりが特に発達に効く」という事実を裏づけています。
では、日本ではどうか?とデータを調べて見ると、未就学児のいる家庭では、仕事のある日の父親の育児・家事時間は10〜40分程度とびっくりするくらい短い。母親は平日でも2〜3時間ほど関わることが多く、父親との差は大きいという結果を見つける事ができました。(国立成育医療研究センターの調査)これは、働き方改革も必要だ!と言える数字ですよね。
3. じゃあ、どんな「時間」が子どもの力になるの?
研究では、単に長く一緒にいるよりも、質の高いやりとりが大切だと報告されています。そう!スマホ片手にとか、お友達とおしゃべりしながら「ながら」時間を単に過ごすだけでは意味がないんです。
質の高いやりとりの例
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目を合わせて話しかける
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子どもの呼びかけに応じて返事をする
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指さしや身ぶりに言葉を添えて関わる
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読み聞かせや歌、簡単な遊び
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日常のケア(おむつ替え、食事、お風呂)を声かけの時間にする
こうした時間は、子どもの語彙力や社会性、集中力、安心感の育成に強く結びつくことが研究で示されています。
4. 父親の関わりも大切
父親の関わりは母親と少し異なるパターンを示すことがあります。研究では、母親ほど幼児期に時間が集中せず、年齢に関係なく一定の関与が続く傾向があると報告されています(Hook, 2011)。
つまり、母親の幼児期の時間投資と、父親の継続的な関わりが組み合わさることで、子どもの発達をより豊かに支える事ができるんです。
5. 忙しい毎日でもできる「小さな時間投資」
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1分でも、抱っこしながら目を見て声をかける
-
歩きながら「きれいだね」「あっち行こうか」とできるだけ声をかける
-
お世話の時間を、簡単なやりとりの時間にする。「オムツ替えるよ~」「今日はどっちの靴下はく?」
大切なのは長さではなく、子どもの気持ちに応じて関わる“質”です。
6. 長い目で見た「心と未来への投資」
幼児期の親との関わりは、子どもの将来の学びや社会性、自己肯定感に影響します。そして、小さなうちは特に、この関わりが安心感にも繋がるんです。
忙しい日々の中でも、小さな関わりを積み重ねることが、子どもの心と脳に確かな土台をつくります。
まとめ
-
幼児期にお金より大切なのは、親自身の時間と関わりの質
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母親は特に幼児期に多くの関わりが必要
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父親も年齢に関係なく関わることが効果的
-
日常の“ちょっとしたやりとり”を意識するだけで十分
子どもと過ごす時間の積み重ねは、目に見えないけれど確実に、子どもの未来を育む最大の投資です。
子どもと過ごす時間が楽しくなるベビーサインの秘密がぎゅっと詰まっているのはこちら「ベビーサイン図鑑」

2025.11.26ヘックマン教授の研究に学ぶ、最強の幼児期投資とは
「幼児期への投資」は一番コスパがいい?
ーヘックマン教授の研究と、ベビーサインの意外な共通点ー
子育てって、「今のこの関わり、本当に意味あるのかな…?」と思う瞬間ありませんか?寝不足だし、時間もお金も限られているし、正直“できることだけしたい”。タイパもコスパもいいのはなんだろう?
そんなママ・パパに、ぜひ知ってほしい研究があります。
✔︎ 乳幼児期への投資は“人生で一番リターンが大きい”
アメリカのノーベル経済学者 ジェームズ・ヘックマン教授 の研究では、
0〜5歳の幼児期に教育・育ちへの働きかけをすることが、もっとも費用対効果が高い
という結果が出ています。
ヘックマン教授の研究によれば、
乳幼児期の環境づくりや関わりは、
・健康
・学び
・社会性
・将来の収入
などの “人生の土台” を大きく変えるそうです。
しかも驚くのは、投資効果の高さ。
研究では、年率13%のリターン になる可能性があると言われています。
(普通の金融投資より高い…!)
▼参考:ヘックマン教授の研究記事
https://news.uchicago.edu/story/investment-early-childhood-programs-yields-robust-returns
https://phys.org/news/2016-12-investment-early-childhood-yields-robust.html
✔︎ 幼児期の投資って何をすること?
そうか!!!じゃあ、3歳児にかけ算を教えたらいいのか?とかそういう知識を詰め込むような話ではなく、「非認知能力(自制心、集中力、社会性など)を幼児期に育むことが重要」だとヘックマン教授は指摘しています。
そこで出てくるのが「ベビーサイン」。
ベビーサインって、まだ言葉が出ない赤ちゃんが、「気持ちを手で伝える」コミュニケーション方法。
実はこれ、ヘックマン教授が指摘する“幼児期への投資”と、とても相性がいいんですよ。
ベビーサインが「コスパ抜群の幼児期投資」と言える理由
① 気持ちが通じる → 赤ちゃんも親もストレスが激減
まだ言葉が出ない時期に「おなかすいた」「もっと」「ねんね」などが伝わる。これだけで、親子のストレスはかなり減ります。
環境の質が上がる=幼児期投資としては最高。
② “非認知スキル” の土台が育つ
ヘックマン教授が特に重視しているのは、
集中力・感情コントロール・やりとりの力などの「非認知スキル」。
ベビーサインは、これらを自然に育てるコミュニケーションなんです。
③ 愛着形成がスムーズに進む
「伝わった」「わかってもらえた」
こんな安心感は、赤ちゃんの自己肯定感の源に。
④ 費用が低い、準備も簡単
特別な道具はほぼ不要。
日常の“親子の手と時間”を使うだけ。
それでいて得られる効果は長期的。
これが「コスパ最強」の理由です。
⑤ お仕事として学ぶ場合も、社会貢献につながる
(助産師・保育士・看護師・療育関係の方へ)
ヘックマン教授の研究では、幼児期支援は社会的リターンも大きいとされています。つまりベビーサインを学ぶことは、「自分のスキル向上」だけでなく「家族と社会の未来づくり」にも貢献します。
子どもに“何かしてあげたい”と思うあなたへ
ベビーサインは、
・特別な教材もいらない
・日常の中でできる
・親子時間の質が一気に上がる
そんな“やさしい投資”です。
ヘックマン教授の研究が示すように、
0〜5歳の時間は、本当に一度きりで、効果は絶大。
その大切な時期に「わかりあえる体験」を重ねることは、
赤ちゃんにとっても
ママ・パパにとっても
未来への最高のプレゼントになりますよ。
非認知能力などについても言及している書籍はこちら

2025.11.26娘とのベビーサインがくれた、育児の安心と居場所
こんにちは。ベビーサイン協会代表理事の吉中みちるです。今日は、ある講師の「ベビーサイン講師になるまでの軌跡」を紹介します。提出してくれたエッセイに基づいて書いていきますね。
「ベビーサインが通じた日」から、すべてが動き始めた
まだ言葉が出ない頃の娘と、手の動きだけで少しずつ気持ちが通じ合っていく——。あの瞬間の衝撃と喜びは、今でも鮮明に覚えています。
最初は半信半疑でした。「本当に伝わるのかな?」と。
でも、娘が一生懸命サインで気持ちを伝えようとする姿、こちらの言葉をベビーサインで返してくれる瞬間に、私は心から思ったんです。
「こんな世界があったなんて…!」
特に驚いたのは、「ありがとう」や日常のあいさつを自然にベビーサインで表現するようになったこと。
“まだ教える月齢じゃない”と思い込んでいたことも、ふだんの関わりの中でしっかり伝わっていたんですね。
この体験を通して、
「ベビーサインの楽しさと素晴らしさを、もっと多くのママやパパに届けたい」
という気持ちが、静かに、でも確実に芽生えていきました。
子育ての「居場所」があったから、今度はつくる側に
私が通っていたベビーサイン教室は、単なる“習いごと”ではありませんでした。子育ての悩みを気負わず話せる、ちょっと肩の力が抜けるような場所だったんです。
気軽に相談できる相手が身近にいなかった私にとって、
「安心して話せる居場所」 は本当に貴重で、心強い存在でした。
だからこそ、同じように孤立しがちなママたちにも、
そんな場所をつくれる側になりたい——。
その思いが、少しずつ膨らんでいきました。
さらに、私は仕事で療育支援に携わり、大学院では「言葉の発達」を研究していました。その経験から、
「視覚的なサポートがあると、言葉の発達がスムーズになる子がいる」
ということを強く実感していました。
特に、ことばの理解に時間がかかるお子さんにとって、ベビーサインは大きな助けになります。
この確信が、講師として本格的に学びたいという気持ちを後押ししてくれました。
ベビーサインは、私の“お守り”
今、娘と向き合う毎日の中で思うのは、
ベビーサインがあるだけで「大丈夫」と思える場面が増えた ということ。
言葉がまだ出ていなくても、サインを通じて気持ちが伝われば、お互いに安心できます。その積み重ねが、育児の不安をそっと軽くしてくれるんです。
ベビーサインは、私にとって小さな“お守り”のような存在。
だからこそ、この安心感やあたたかさを、
これからママ・パパになる方、子育て真っ最中の方にも届けたい。
そんな思いで、私はベビーサイン講師育成プログラムに参加することを決めました。
あなたの経験も、誰かの力になる
いかがでしたか?
もし今、
「自分の経験を活かしたい」
「子育てを応援したい」
「もっとできることがある気がする」
そんな気持ちが少しでもあるなら、
ベビーサインの講師資格を取得する学びは、きっとあなたに新しい可能性と気づきをくれるはずです。
あなたの想いは、必ず誰かの支えになります。
ベビーサインを通じて、一緒にその第一歩をつくっていきませんか?
2025.11.220歳から読み聞かせは効果あり──アイルランド研究が示す「赤ちゃんの力」
「読み聞かせって、いつから始めればいいですか?」
これ、よくいただく質問のひとつです。
私の答えはいつも同じ。
「思い立ったその日から。どんなに早くても大丈夫です」
なぜそう言い切れるのか?単純に私が絵本大好きって事もあるんですが、
赤ちゃんの脳とことばの発達に関する研究、そして20年以上ベビーサインに関わってきた現場での経験の両方にちゃんと裏づけがあります。
■ 0歳からの読み聞かせで、赤ちゃんはすでに育つ
アイルランド経済・社会研究所(ESRI)の Aisling Murray 博士らが行った研究があります。
論文:
“Does reading to infants benefit their cognitive development at 9-months-old?”
(乳児への読み聞かせは9か月児の認知発達にプラスの影響を与えるか?)
大規模な出生コホート調査「Growing Up in Ireland」のデータを用いて、
0歳の赤ちゃんに読み聞かせをしている家庭とそうでない家庭を比較したところ、
-
“問題解決能力(problem-solving)”
-
“コミュニケーション能力(communication)”
この2つの指標で、読み聞かせをしている赤ちゃんのほうが有意に高いという結果が得られました。
つまり、
ことばが出る前でも、絵本を読んでもらう経験はしっかり赤ちゃんの発達に届いているってこと!
この研究は「読み聞かせの早すぎ問題」に明確な答えをくれるように感じます。赤ちゃんはまだしゃべれない、意味もわかっていない……そんなふうに見えても、心と脳は確実に受け取っています。
■ ベビーサインの子たちは、絵本が大好きに育つ
もうひとつ、私が強くお伝えしたい理由があります。
ベビーサイン教室に通ってくれたご家庭に行ったアンケートでは、
なんと91%の子どもが「絵本が好き」と答えているのです。
ベビーサインをやっているご家庭は、
赤ちゃんが「見る」「聴く」「伝える」の力を大切にしながら、日々コミュニケーションを重ねています。そこに自然と 絵本というツールが入りやすいのだと思います。
赤ちゃんがページをめくるのをじっと見てくれたり、
お気に入りの絵にサインをしてくれたり、
「もう1回!」と【もっと】のベビーサインでお願いしてくれたり。
そうした経験が「絵本=楽しい」という気持ちに結びつき、
やがて「読むことそのものが好きな子」に育っていきます。
■ 読み聞かせは、“いつまで”続けたらいい?
私は、赤ちゃんの時期だけではなく、
文字が読めるようになってからも読み聞かせを続けてほしいと思っています。
なぜなら──
読み聞かせは「知識を伝える時間」ではなく、
親子が同じ世界を共有するコミュニケーションだから!
大きくなっても、親子で1冊の絵本を介して寄り添うことは、それ自体が温かな時間を作り出してくれます。
「ここ、おもしろいね」と感じたことをことばにしたり、
知らなかった言葉をその場で自然に吸収したり。
そんな時間は、脳の成長だけでなく、
子どもの安心感・自己肯定感にも寄り添ってくれます。
また、文字の読み始めの時期は、「読む」ことに一生懸命で、お話の世界を楽しむ余裕がありません。
だから、文字が読めるようになったから、「一人で読めるでしょ!」ではなくて、「読み聞かせ」は全く別のものって捉えて欲しいです。
とはいえ、忙しかったあの頃を思い出すと、子どもたちに十分大きくなるまで読み聞かせをしてあげられたか?というと、ちょっぴり後悔もあるんだけど・・・
■ おわりに
Aisling Murray 博士の研究が示すように、
0歳からの読み聞かせは確かな意味を持っています。
そして、ベビーサインの現場で20年以上赤ちゃんと関わってきた中で、
私は何度も実感してきました。
読み聞かせは、親子が心を通わせ、ことばの土台を育てる最強の時間だということを。
だからこそ、
生まれたてでも、
反応が薄くても、
ページを噛んじゃっても。
絵本の時間はいつだって、今日から始められます。
そして、続ければ続けるほど、親子の豊かな未来につながっていきます。
こちら、ベビーサイン図鑑にはそんな絵本の大切さも書きました。
良かったら手に取ってみてください。

2025.11.1820周年の集大成へ──一冊の本が生まれるまでの「出会い」の話
出版と出会い
20周年を迎えるにあたって、どうしても「ベビーサインの集大成となる本をつくりたい」。その思いに背中を押され、私は昨年の春、出版塾の門を叩きました。
そこで出会ったのが、J.ディスカバー代表の 城村典子さん でした。
私が“なんとなく思い描いていた”だけのアイデアを、ひとつひとつ丁寧に質問しながら形にしてくださったのは、ほかでもない城村さんでした。あのとき、あの瞬間が、今回の本づくりの確かなスタート地点になりました。
そして今回の出版にあたり、城村さんが寄せてくださったレビューが本当に素晴らしくて…。読みながら胸がじんとするような内容でしたので、是非、ここでご紹介させてください。
城村典子さんからのレビュー
赤ちゃんの立場になってみると、本当に大変だと思います。
世界の秩序もわからない、言葉も話せない、伝えたいことも伝わらない。
まだ何も知らない状態です。それなら泣くし、怒るし、大騒ぎにもなります。
生きること、成長することが仕事とはいえ、大変な毎日です。鹿や馬が生まれて数時間で立ち上がり、野生動物が教えられなくても狩りができるのとは違い、人間は長い時間をかけて育っていきます。
実際、人間は受精から10歳くらいまでの間に、生命誕生からの35億年を凝縮したようなスピードで進化すると言われます。さらに、生まれてからも数十万年の人類の進化を個人が追体験するのです。
子どもにとって「成長すること」はまさに大仕事なのです。
その一方で、赤ちゃんが愛くるしい存在として生まれてくるのは、神様の計らい。親が「かわいい」と思えるのもまた、神様の仕組み。そうして、子どもの大変さと、大人の愛情がせめぎ合う最前線に、成長の奇跡があるのです。
私たち大人も、先輩人類として同じ道を歩み、たくさんの加護を受けて今ここにいます。そして人類は「意志が通じ合う喜び」を知っている存在です。
だからこそ、赤ちゃんにも早くその喜びを知ってほしい。私たちもまた、赤ちゃんと意思疎通ができる喜びを感じたい。
ベビーサインは、そんな頑張る赤ちゃんを応援できるコンタクトツールなのです。
お礼を伝えたら、もっと幸せな言葉が返ってきた
レビューを読んだ私は、こんなお礼を送らせていただきました。
「出版準備のときに“人類の進化と赤ちゃんの成長、そしてベビーサインを重ねてみては?”とアドバイスをくださったこと、今でも鮮明に覚えています。
私なりに原稿に落とし込んでみたものの、少し堅くなってしまい断念したのですが…今回のレビューで、私が表現しきれなかった部分を美しく、そしてわかりやすく言語化していただき、“これだ!”と感じました。
「意志が通じ合う喜び」という言葉は、私が本の中で書いた“赤ちゃんは社会性をもって生まれてくる”という内容とも繋がり、とても嬉しかったです。
改めて、この本は城村さんのお力添えがあってこそ生まれた一冊だと実感しています。」
すると、さらにこんなお返事が──
「ははは、私しつこいですね(笑)
最初に吉中さんに出会ったときの喜びを、書籍紹介の中でも“自慢”しちゃいました。
(私の本じゃないけど、勝手に自慢(笑))」
読んだ瞬間、思わず笑ってしまって、そして胸がじんわりあたたかくなりました。そして、実はつい先日も私の本を講座の中で引用してくださったんです。
出会いに、心からの感謝を
出版には、多くのご縁や偶然が折り重なっています。
でもその中でも、城村さんとの出会いは、私にとって特別なものでした。
このご縁があったからこそ、『ベビーサイン図鑑』は生まれました。
あらためて、心から感謝しています。

2025.11.17「黄色のサイン」がつないだ、次男くんの“大相撲ラブ”──さいとうさちこ先生の子育てエピソード
こんにちは。ベビーサイン協会代表の吉中です。
今日は、認定講師の さいとうさちこ先生 から届いた、とても素敵な“わが子とベビーサイン”のお話をご紹介します。
読んでいて思わずクスッとしたり、「あぁ、ベビーサインってやっぱりいいな」としみじみ感じたり…。そんな温かいエピソードです。
ベビーサインとの出会いは、第一子の育児中
さちこ先生は、第一子の育児中にベビーサインと出会いました。
先生はなんと、もともとラジオキャスター。声のお仕事をしていたので、赤ちゃんと“まだ話せないのにコミュニケーションできる”ということに衝撃を受けたそうです。
「これはもっとママたちに広めたい!」と、
第二子を妊娠中に認定講師の資格を取得。
次男くんは、まさに“生まれた瞬間からベビーサイン環境”での育児スタートだったんですね。
10ヶ月で返ってきた初めてのサイン。そこから爆発!
生後10ヶ月で初めてサインを返してくれた次男くん。
そこからは、まさに雪崩のようにサインが増えていき…
2歳までに170語!
これは、ちょっとした「ベビーサイン語彙力王」です(笑)
ベビーサインで「やりたいこと」や「気持ち」をどんどん伝えてくれるので、
自然と“この子はなにが好きなのか”にも気づきやすくなったとのこと。
1歳3ヶ月、「黄色」のベビーサインが大ブームに
その中でも特に可愛かったのが 色のベビーサイン。
1歳3ヶ月頃に覚えてから、特に「黄色」が大のお気に入りに。
黄色いものを見つけると、満面の笑みで
「きいろ!」のベビーサイン。
ここから、思いもしなかった世界へつながっていきます。
色→相撲へ。まさかのルートで“推し活”スタート
さちこ先生のご家族は、実はみんなお相撲好き。
本場所の時期は、夕方からテレビで観戦するのが定番だったそうです。
そこで次男くん、気づくわけですよ。
「締め込み(まわし)って、いろんな色がある…!」
色好きの子には、そりゃもう刺さりますよね。
特に当時、黄色い締め込みをしていた 遠藤関 が出てくると、それはもう大喜び。そこから、「黒!」「青!」と、まるで実況中継のようにベビーサインで色を教えてくれるように。
やがて興味は、締め込み → 化粧まわし → 力士 → 相撲そのものへ。
階段を駆け上がるように“相撲愛”が深まっていきました。
3歳前には「四股名と所属部屋」を写真だけで判別
これは私も読んで驚いたのですが…
3歳前には、雑誌の力士の写真を見て
「○○部屋の○○!」とわかるようになっていたそうです。
(文字はまだ読めていないのに!)
恐竜や電車にハマる子もいるように、
次男くんにとっての“沼”は 相撲 だったんですね。
家族で全力サポート。「好き」のエネルギーってすごい
さちこ先生ご一家は、次男くんの「好き」を全力で応援。
土俵入りごっこ、行司ごっこ、呼び出しさんの真似…
家の中がちょっとした相撲部屋のようになっていた時期もあったそうです。
楽しそうに夢中になる姿を見ていると、
親としても“もっと伸ばしてあげたい!”と思いますよね。
ベビーサインが“好きを見つける力”をくれた
さちこ先生はこう言っています。
きっと、ベビーサインで色を楽しむ経験をしていなかったら、
ここまで相撲にハマることはなかったと思うんです。
もうひとつ、個人的に深く共感したのは
「ベビーサイン育児をしていると、子どもの表情をよく見るようになる」
という言葉。
確かにそうなんです。
ベビーサインを返してくれる日を待っていると、自然と表情や手の動きに敏感になる。それが、“好き”に気づくアンテナになるんですよね。
そして現在。7歳の次男くんは相撲クラブで奮闘中!
次男くんは現在7歳。
地域の相撲クラブに入り、毎週の稽古に励んでいます。
3歳の頃からの夢はずっと
「横綱になること」。
もう、まっすぐで素敵すぎます。
本人は、その夢に近づくために「入りたい高校」まで考えているそうで、
家族みんなでその背中を優しく押しているとのこと。
おわりに──「ベビーサインでつながる」って、こういうこと
このエピソードを読んで、改めてベビーサインには
「親子の小さな気づきを積み重ねて、子どもの世界をぐっと広げてくれる」
そんな力があると感じました。
何気ない“黄色”のサインが、
一生の夢につながるとは、誰が想像したでしょう。
ベビーサインは、親子の未来をそっと押してくれる小さなサインなのかもしれません。
このほかにも、たくさんの親子のベビーサインエピソードを掲載しているのが、こちらの「ベビーサイン図鑑」是非ご覧ください。

2025.11.17赤ちゃんは、生まれた瞬間から“世界とつながろう”としている
バウアーとヴァンデルメーアが示した驚きの発達科学!
赤ちゃんって、どれくらい世界を理解しているんだろう?
まだ視力も弱く、言葉もない。
大人から見ると「まだ何もわからない存在」に見えてしまいますよね。
でも実は——
赤ちゃんは、生まれたその瞬間から
“自分で世界と関わろうとしている存在”なんです!
発達心理学と発達神経科学、どちらからもとっても大切な視点なんです。
この記事では、その証拠となる
T.G.R.バウアーの(随行性認知) と
A.ヴァンデルメーアの(意図的運動)
という2つの研究をわかりやすく紹介します。
そして最後に、
この2つの研究が ベビーサイン とどうつながるのかも
最後にまとめました。
1|T.G.R.バウアーが示した「随行性認知」
赤ちゃんは“原因と結果”を感じとれる!
1960年代、乳児研究のパイオニアである
T.G.R.バウアー(Timothy G. R. Bower) は、
赤ちゃんの驚くべき能力を明らかにしました。
それが 「随行性認知(contingency perception)」 です。
自分の行動が、周りの変化を引き起こしたと気づく力。
例えば——
赤ちゃんが足を動かすとモビールが動く、
手を動かすと光がつく。
すると赤ちゃんは、その動きを繰り返すようになります。
「こうすると、こうなる!」
まだ数ヶ月の赤ちゃんなのに、
自分の動きとまわりの変化のつながり(因果)を
しっかり感じ取っているんですよ!驚きですよね!
▼ どうしてこれが重要なの?
随行性認知は、その後の発達と深く関わるからです。
-
自己効力感(やればできる!)
-
大人とのコミュニケーション
-
社会的学習
-
意図的な関わり
-
世界への興味の芽生え
つまりバウアーは、
「赤ちゃんは受動的ではなく、能動的な存在」
であることを世界に示した人物なのです。
2|バウアーの後の研究でわかったこと
“もっと早い時期から”赤ちゃんは世界を理解していた!
バウアー以降の研究では、さらに驚く事実がわかりました。
✔ 生後2〜3ヶ月どころか、新生児でも随行性を感じている
例:吸啜(吸う動き)で音・光が変わるとすぐに学習する
✔ 物理的な随行性だけでなく、“社会的随行性”にも反応
例:自分が声を出すと大人が笑う・うなずく、視線が合う など
赤ちゃんは、大人の反応にすごく敏感。
この「通じた!」の経験が、のちの共同注意・語彙獲得などの基礎になっていきます。
“赤ちゃんと大人のやりとり”が発達のエンジン
という考えは、この後の研究でどんどん強固になりました。
3|ヴァンデルメーア教授が示した“意図的運動”
赤ちゃんの動きは「ただのバタバタ」じゃない!
ノルウェー科学技術大学(NTNU)の
A.ヴァンデルメーア(van der Meer)教授 の研究は、
バウアーの理論を“運動の視点”から強力に後押しします。
ヴァンデルメーア教授は、
新生児〜生後数ヶ月の赤ちゃんの運動を詳細に調べ、
次のことを明らかにしました。
✔ 赤ちゃんの手足の動きは“意図的で学習的”。
ただの偶然のバタバタではない!
-
自分の手を見つめる
-
その手を動かしてみる
-
動きと見え方を合わせようと調整する
-
何度も試行錯誤しながら動きを洗練させる
つまり、ぎこちないけど
“自分の体をコントロールしよう”という意思が
生まれた瞬間から働いている
これが最新の運動発達科学の大きな結論です。
そしてこれは、バウアーの随行性認知とピタッと重なります。
▼
赤ちゃんは
「どう動くか」を学びながら
「動いた結果どうなるか」も学んでいる。
“知覚—運動—認知の統合”
がすでに始まっているということです。
4|両者の研究が示す共通のメッセージ
バウアー(随行性)とヴァンデルメーア(意図的運動)。
分野は違っても、
2人の研究が示しているメッセージは同じです。
赤ちゃんは、生まれた瞬間から
自分の力を使って世界を理解しようとしている。
受動的な存在ではなく、能動的な、小さな学習者・科学者。
これは現代の赤ちゃん研究の「当たり前の前提」になっています。
5|そして…ここから“大人の関わり”がとても大事になる
随行性も、意図的運動も、ひとつの条件があるときに特に育ちます。
それは——
赤ちゃんの行動に、大人が応えてあげること(応答性)
-
目が合ったら微笑む
-
声を出したら返事をする
-
手を伸ばしたら受け止める
-
気づいた気持ちを言葉にしてあげる
この小さな“応答の積み重ね”が赤ちゃんにとって
「世界はわたしに反応してくれる安心の場所」
だと伝わります。
そしてこの安心感こそが、学び・コミュニケーション・愛着の土台なんです。
6|ベビーサインがこの流れにぴったり寄り添う理由
ここまで読んでくださった方は、もう自然と気づかれているかもしれません。
随行性認知(バウアー)
×
意図的運動(ヴァンデルメーア)
この2つを同時に育てる関わりが、まさに ベビーサイン です。
✔ 赤ちゃんが“手を使って意思表示する”(意図的運動)
✔ それに大人がすぐ応えてくれる(社会的随行性)
✔ 「通じた!」という成功体験が積み上がる(随行性認知)
この循環は、赤ちゃんの能動性・自信・学び・愛着を一気に育ててくれるんです。
だからベビーサインは、単なる便利ツール以上の価値を持っています。
“赤ちゃんと大人が、互いを理解し合う最初の言葉”
と言っても過言ではありません。
おわりに:
赤ちゃんは、思っている以上に“自分で育っていく力”を持っている!
赤ちゃんは、生まれた瞬間から
世界と関わろうとする小さな探究者。
そして、大人の応答的な関わりがその探究心を支え、
赤ちゃんの“わかった!”を育てます。
バウアーの随行性認知も、
ヴァンデルメーアの意図的運動も、
どちらもこのメッセージを強く裏づけています。
そしてベビーサインは、その発達の流れを自然に、楽しく後押しするツールです。
赤ちゃんが発信してくれる小さなサイン。そのひとつひとつに、
ぜひ笑顔と優しい反応で応えてあげてくださいね。
ベビーサインの全体像を把握するにはこちら「ベビーサイン図鑑」がおすすめです。下の画像をクリックしてね!今なら購入者限定ダウンロード付。

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