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2026.10.06赤ちゃんの中で「物・ことば・サイン」がつながるとき

赤ちゃんにとって「眠ること」は、ただ体を休める時間ではないのかもしれません。

これまで紹介してきた研究では、

① 6〜8か月:寝ている間に「言葉と意味」を整理する
↓
② 9〜16か月:寝ている間に「知識を一般化」する
↓
③ 14〜17か月:寝ている間に「出来事の記憶」を整理する

ということが、少しずつ見えてきています。

今回は、この③のお話です。

「この物」と「この言葉」をセットで覚える

2020年に発表された研究では、14〜17か月の赤ちゃんを対象に、「物」と「その物の名前」の組み合わせを、どのように記憶するのかが調べられました。

実験では、画面にいろいろな物の写真を見せながら、その物の名前を聞かせます。

たとえば、

ボールの写真を見ているときに
「Ball(ボール)」という言葉を聞く。

このように、「物」と「その名前」を一緒に経験するのです。

その後、赤ちゃんの脳の反応を調べると、昼寝をした赤ちゃんでは、

「この物と、この言葉が一緒だった」

という具体的な出来事の記憶が残っていることを示す反応が見られました。

つまり、

「ボールという言葉を知っている」

だけではなく、

「この物を見て、Ballって聞いた」

という経験そのものが、記憶として整理されていた可能性があるのです。

これ、ベビーサインにもつながると思いませんか?

私はこの研究を読んで、ベビーサインをお伝えするときの、ある「基本」を思い出しました。

ものの名前のサインをするときは、

言葉とサインだけを見せるのではなく、できるだけ実際の対象物も一緒に見せる。

たとえば「ボール」なら、

実際のボールを見せて、

「ボール」と声をかけながら
「ボール」のベビーサインを見せる。

りんごなら、実際のりんごを見せてもいい。

手元に本物がなければ、りんごのイラストや写真、おもちゃでもいい。

大切なのは、

「これは何?」という対象が、赤ちゃんの目の前にあること。

つまり、

実際の物・イラスト・おもちゃなどの対象物
+ 声で聞く言葉
+ ベビーサイン

を、ひとつの経験として重ねていくのです。

今回の研究では、赤ちゃんは「物」と「言葉」の組み合わせを経験し、それを睡眠によって記憶として整理していました。

もちろん、今回の研究はベビーサインを使った研究ではありません。

だから、

「ベビーサインをすると記憶力がよくなる」

ということを、この研究から言うことはできません。

でも、とても興味深いのは、

赤ちゃんが「物」と「言葉」をバラバラにではなく、ひとつの経験として結びつけている

ということ。

そう考えると、ベビーサインを使うときにも、

「ボール」という言葉を言って、サインだけを見せるのではなく、

実際のボールを見せる
↓
「ボール」と声をかける
↓
「ボール」のサインを見せる

という経験には、とても意味がありそうです。

赤ちゃんの中では、

「これがボール」
「ボールって聞いた」
「大人がこの動きをしている」

という、いくつもの情報が同時に入ってくる。

そして、それを何度も経験する中で、少しずつ、

「あ、これとこれとこれがつながっているんだ!」

と、自分で世界の仕組みを発見していく。

私は、ここにベビーサインの面白さがあると思っています。

赤ちゃんに「覚えさせる」のではなく、

赤ちゃんが世界を理解するための手がかりを、ひとつ増やしてあげる。

そして、その経験を眠っている間にも、脳が整理している。

そう考えると、

「ほら、ボールだよ」
「ボールだね」

と、目の前のボールを一緒に見ながら言葉とサインを届ける、いつもの何気ないやりとりも、ちょっと違って見えてきませんか?

赤ちゃんは、私たちが思っている以上に、

見て、聞いて、感じて、覚えて、つなげている。

ベビーサインは、その「つながり」をつくるための、ひとつの手がかりなのかもしれません。

※今回紹介した研究は、14〜17か月児を対象に、物とことばの組み合わせが睡眠後にどのように記憶されるかを調べたものです。ベビーサインそのものを検証した研究ではありません。

Friedrich, M. et al. (2020). Sleep-dependent memory consolidation in infants protects new episodic memories from existing semantic memories. Nature Communications, 11, 1298.

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