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2026.07.24なぜ「リズム」が言葉の発達につながるの?──赤ちゃんの脳で起きていること

「歌を歌うと、言葉の発達にいいらしい。」

そんな話を聞いたことはありませんか?

でも、なぜ歌が言葉につながるのでしょう。

実は、最近の乳幼児発達研究では、「音楽」と「言葉」はまったく別のものではなく、どちらも**”時間の流れの中にあるパターン”**として脳が処理している可能性があることが分かってきました。

今日は、その不思議なつながりをご紹介します。

赤ちゃんに聞こえている世界は、大人とは違う

私たちは、「お・は・よ・う」という一つの言葉を自然に聞き取っていますよね。

でも、生まれたばかりの赤ちゃんは違います。

赤ちゃんに聞こえているのは、まだ「お・は・よ・う」という一つの言葉ではなく、音が次々につながって聞こえてくる状態です。

たとえば私たちには「お・は・よ・う」と一つの言葉に聞こえますが、赤ちゃんには、どこで区切ればいいのか分かりません。

「おは」で区切るの?

「おはよ」で区切るの?

それとも全部つながった一つの音なの?

そんな状態から、赤ちゃんは少しずつ言葉を見つけていくのです。

では、どうやってその「言葉のまとまり」を見つけているのでしょうか。

赤ちゃんは「音のパターン」を見つける名人だった

乳幼児研究でよく登場する言葉に、「統計学習(Statistical Learning)」があります。

少し難しく聞こえますが、やっていることはとてもシンプルです。

赤ちゃんは、毎日聞こえてくる音の並びを無意識のうちに観察・分類しています。

例えば、「お」の後には「は」が来ることが多い。

「は」の後には「よ」。

「よ」の後には「う」。

こうした音のつながりを何度も経験することで、「おはよう」という一つのまとまりを少しずつ見つけていくのです。

誰かが教えているわけではありません。

赤ちゃん自身が、音の規則性を見つけて学んでいるのです。

この能力は、生後8か月頃の乳児でも確認されており、乳児の言語獲得の土台になる重要な仕組みだと考えられているんですって!

リズムも「次を予測する力」を育てている

ここで音楽の話につながります。

音楽を聴いていると、自然と手拍子をしたり、体が揺れたりすることがありますよね。

それは、脳が「次はこのタイミングだ」と先回りして予測しているからです。

これを「リズム予測(Rhythmic Prediction)」と呼びます。

私たちの脳は、規則的なリズムを聞くと、「次も同じタイミングで音が鳴るだろう」と自然に予測します。

そして最近では、この「予測する力」が、言葉を聞き取るときにも使われている可能性があることが報告されています。

つまり、音楽を処理する脳と言葉を処理する脳には、共通する仕組みがあるのではないか、と考えられているのです。

「歌えば頭が良くなる」という話ではない

ここで一つ、とても大切なことがあります。

この記事を読んで、「じゃあ、たくさん歌を聞かせれば言葉が伸びるんだ!」と受け取ってほしいわけではありません。

現在の研究では、音楽経験と言語発達の関連は数多く報告されていますが、それだけで言葉の発達が決まるとは言えません。そんな単純なものではありませんよね。

子どもの育ちには、親子のやり取りや遊び、絵本、睡眠、生活環境など、たくさんの要素が関わっています。

だからこそ大切なのは、「音楽を聞かせること」ではなく、「音楽を通して人と関わること」なのです。

だから、歌には意味がある

赤ちゃんに歌うとき、大人は自然と顔を見ます。

笑顔になります。

体を揺らします。

手を動かします。

赤ちゃんも、その表情や動きを見ながら、同じリズムを感じています。

歌は、音だけを届けているのではありません。

親子が同じ時間を共有し、「今、一緒にいるね」という体験をつくっています。

その中で赤ちゃんは、音の流れを感じ、リズムを感じ、人とのやり取りを楽しみ、少しずつ言葉の世界へ近づいていくのかもしれませんね。

研究は、子育ての風景を違って見せてくれる

研究を読む前は、「歌は楽しいから歌うもの」と単細胞な私は思っていました。

でも研究を知ると、毎日の子育ての風景が少し違って見えてきますよね。

抱っこしながら歌うこと。

手遊び歌で笑い合うこと。

赤ちゃんの声に合わせて歌い返すこと。

そんな何気ない時間の中で、赤ちゃんの脳は、音の規則性を学び、人とのタイミングを感じ、言葉につながる土台を少しずつ育てているのかもしれません。

やっぱり、目の前の赤ちゃんと触れ合って楽しむことって、子育ての基本中の基本なんだな、と改めて感じます。

そして私は、そのやり取りの中にベビーサインという「手の動き」が加わることで、親子のコミュニケーションはさらに豊かになると、20年以上感じてきました。

今回の論文を読んで、「歌」「リズム」「言葉」は別々のものだと思っていた私の中で、一つにつながりました。

20年以上教室で当たり前のように歌ってきた時間にも、こんな発達的な意味があったのかもしれないな~。

研究は、新しい知識を教えてくれるだけではなく、これまで積み重ねてきた実践を、もう一度見つめ直すきっかけも与えてくれますね。

これからも「乳幼児発達研究ラボ」では、世界中の研究を読み解きながら、保育・医療・家庭で生かせる言葉に翻訳してお届けしていきます。


今回紹介した主な研究

Saffran, J. R., Aslin, R. N., & Newport, E. L. (1996). Statistical learning by 8-month-old infants. Science, 274(5294), 1926–1928.
DOI: 10.1126/science.274.5294.1926

Ladányi, E., et al. (2025). Rhythm Processing Across Development: Origins, Links to Language Processing, and Perspectives for Intervention. Annals of the New York Academy of Sciences.
DOI: 10.1111/nyas.70161
PMID: 41400590

Hilton, C. B., et al. (2022). Music of infant-directed singing entrains infants’ social visual behavior. Proceedings of the National Academy of Sciences.
DOI: 10.1073/pnas.2212139119
PMID: 36322755