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2026.08.12「ごっこ遊び」は、いつから始まる?

これまで3回の記事で、

Tune In(チューン・イン)
Talk More(トーク・モア)
Take Turns(テイク・ターンズ)

という「3つのT」が、特別な教育プログラムとしてではなく、毎日の遊びや生活の中で使える考え方だというお話をしましたね。

今回は、その中でもこの本「3000万語の格差」に登場する「ごっこ遊び」に注目してみたいと思います。

「ごっこ遊び」と聞くと、

「2歳くらいになったら、おままごとをするようになる」

そんなイメージがないですか?

でも、ここにたどり付くまでの発達の過程をちょっと一緒に見ていきましょう。


ごっこ遊びは、いきなり始まらない

赤ちゃんの遊びは、最初はとてもシンプルです。

触る。
握る。
振る。
口に入れる。
落とす。

「これをやったら、こうなった!」

そんな自分と物との関係を確かめるような遊びから始まります。

そして、少しずつ、

「大人がやっていることをまねする」

という行動が増えてきます。

たとえば、

おもちゃの電話を耳に当てる。
スプーンを口に運ぶ。
ぬいぐるみに何かを食べさせる。

こうした行動が、やがて「ごっこ遊び」へとつながっていきます。


大体の目安はこんな感じ

もちろん、子どもの発達には個人差があります。

なので「○か月になったら必ずこうなる」というものではありませんが、ざっくり発達の流れを見ると……

👶 1歳前後

「まねっこ」の時期

大人の行動をよく見て、まねすることが増えてきます。

電話を耳に当てる。
コップを口に持っていく。
人形を抱っこする。

まだ「ごっこ遊び」と呼ぶにはシンプルでも、ここには大切な土台があります。


👶 1歳半ごろ~

「~のつもり」が少しずつ始まる

研究では、pretend play(ごっこ遊び)は18か月前後から多くの子どもに見られるようになります。

たとえば、

ぬいぐるみにご飯を食べさせる。
人形を寝かせる。
おもちゃの電話で「もしもし」をする。

など。

「自分が食べる」だけではなく、誰かに食べさせる

「自分が寝る」だけではなく、人形を寝かせる

ここには、「見立てる」「誰かの立場になって行動する」という、少し高度な認知の発達が見えてきます。


👶 2歳ごろ~

遊びが少しずつ「つながる」

一つの行動だけではなく、

「人形がお腹すいた」

「ご飯を作る」

「食べさせる」

「お茶を飲ませる」

「おやすみ」

というように、複数の行動がつながっていきます。

日本の幼児を対象にした象徴遊びの研究でも、12~17か月、18~23か月、24~29か月と年齢が上がるにつれて、遊びの内容がより複雑になっていくことが示されています。


👧 3歳ごろ~

「役割」がどんどん増えてくる

「ママ」「お医者さん」「お店屋さん」「先生」など、誰かになりきって遊ぶことも増えてきます。

自分だけの世界だったごっこ遊びが、

「私はお母さんね」
「じゃあ、あなたは赤ちゃん」
「ご飯できましたよ」

というように、人とのやりとりを含んだ遊びへと広がっていきます。
保育園でお店屋さんごっこを楽しんでいた子どもたちを思い出しますね~

もちろん、ここにも個人差があります。

だから、

「まだごっこ遊びをしない!」

と焦る必要はありません。

発達は階段のようにきっちり進むものではなく、いろいろな遊び方が重なりながら少しずつ複雑になっていきます。


そして、ここで「3つのT」が登場します

ここが、今回私が一番おもしろいと思ったところ。

子どものごっこ遊びを見つけたら、大人はどうする?

Tune In

まず、子どもが何をしているのかを見る。

たとえば、子どもがぬいぐるみにスプーンを持っていっている。

「あ、今この子にご飯を食べさせているんだな」

と気づく。

ここで大人が、

「これは何?」「何してるの?」

と質問攻めにする必要はありません。

まずは、子どもの世界に入る。


Talk More

子どもの遊びに、少しだけ言葉を足してみる。

「赤ちゃん、おなかすいたのかな」

「はい、どうぞ~」

「おいしいね」

子どもが作っている世界を壊さないように、言葉を添えていく。


Take Turns

そして、やりとりを続ける。

子どもが食べさせる。

大人が「おいしい!」と言う。

子どもがまた食べさせる。

今度は大人が、

「次は何にする?」

と待ってみる。

子どもが何かをする。

大人が応える。

また子どもが返す。

これがTake Turns。


「ごっこ遊びを教える」のではなく、「ごっこ遊びに入る」

ここ、すごく大事だと思うんです。

大人が、

「こうやって遊ぶんだよ」

と教え込む必要はありません。

子どもが作っている世界に、

「私も入っていい?」

という気持ちで入っていく。

すると、ごっこ遊びそのものが、

コミュニケーションの場

になります。

本の中に、

「ごっこ遊びに保護者を招き入れることで、子どもは自分でリードする『ふり』をしつつ、保護者とのやりとりから学んでいる」

という、とても面白い説明があります。

これ、まさに「3つのT」なんですよね。


そして、これってベビーサインにもつながる

私はここを読んでいて、

「これ、ベビーサインをしている親子にも同じことが言えるな」

と思いました。

ベビーサインも、

「今日はこのサインを教えよう!」

と大人が主導するより、

赤ちゃんが今、何を見ている?
何を伝えようとしている?
何に興味を持っている?

そこに大人が気づくことから始まります。

それがTune In

そして、赤ちゃんが見ているものについて

「これは、りんごだね」
「もっと欲しい?」
「おいしいね」

と、言葉やベビーサインを添える。

それがTalk More

赤ちゃんからすぐにベビーサインが返ってこなくても、まずは表情、声、動きなどで返してくれたら、それを受け取ってまた返す。

それがTake Turns

だから、「3つのT」は単に「たくさん話しかけましょう」という話ではないんですよね。

子どもと一緒に、ひとつの世界をつくっていく。

そのためのヒントなんだと思います。


🎵そして、もう一つ面白いのが「音楽」

今回の本のページでは、ごっこ遊びだけではなく、音楽と3つのTについても紹介されています。

歌うこと。

踊ること。

手拍子すること。

これも全部、子どもとの「やりとり」になる。

しかも音楽には、言葉だけではなく、リズム、身体の動き、パターン、模倣など、子どもの発達につながるいろいろな要素があります。

歌うだけでも、3つのTはできる。

これ、面白くないですか?

次回はこの**「3つのT×音楽」**を、もう少し掘り下げてみたいと思います。


参考にした研究

  • Nielsen, M. et al. (2004). Pretend play, mirror self-recognition and imitation: a longitudinal investigation through the second year. Infant Behavior and Development, 27(3), 342–365.

  • 藤野博(2002)「健常幼児における象徴遊びの発達―象徴遊びテストによる調査―」『音声言語医学』43(1), 21–29. DOI: 10.5112/jjlp.43.21.

※発達の月齢はあくまで大まかな目安です。CDCも、発達のマイルストーンは「多くの子ども(75%以上)がその年齢までにできること」を示す目安であり、標準化された発達スクリーニングの代わりではないと説明しています。