2025.11.220歳から読み聞かせは効果あり──アイルランド研究が示す「赤ちゃんの力」
「読み聞かせって、いつから始めればいいですか?」
これ、よくいただく質問のひとつです。
私の答えはいつも同じ。
「思い立ったその日から。どんなに早くても大丈夫です」
なぜそう言い切れるのか?単純に私が絵本大好きって事もあるんですが、
赤ちゃんの脳とことばの発達に関する研究、そして20年以上ベビーサインに関わってきた現場での経験の両方にちゃんと裏づけがあります。
■ 0歳からの読み聞かせで、赤ちゃんはすでに育つ
アイルランド経済・社会研究所(ESRI)の Aisling Murray 博士らが行った研究があります。
論文:
“Does reading to infants benefit their cognitive development at 9-months-old?”
(乳児への読み聞かせは9か月児の認知発達にプラスの影響を与えるか?)
大規模な出生コホート調査「Growing Up in Ireland」のデータを用いて、
0歳の赤ちゃんに読み聞かせをしている家庭とそうでない家庭を比較したところ、
-
“問題解決能力(problem-solving)”
-
“コミュニケーション能力(communication)”
この2つの指標で、読み聞かせをしている赤ちゃんのほうが有意に高いという結果が得られました。
つまり、
ことばが出る前でも、絵本を読んでもらう経験はしっかり赤ちゃんの発達に届いているってこと!
この研究は「読み聞かせの早すぎ問題」に明確な答えをくれるように感じます。赤ちゃんはまだしゃべれない、意味もわかっていない……そんなふうに見えても、心と脳は確実に受け取っています。
■ ベビーサインの子たちは、絵本が大好きに育つ
もうひとつ、私が強くお伝えしたい理由があります。
ベビーサイン教室に通ってくれたご家庭に行ったアンケートでは、
なんと91%の子どもが「絵本が好き」と答えているのです。
ベビーサインをやっているご家庭は、
赤ちゃんが「見る」「聴く」「伝える」の力を大切にしながら、日々コミュニケーションを重ねています。そこに自然と 絵本というツールが入りやすいのだと思います。
赤ちゃんがページをめくるのをじっと見てくれたり、
お気に入りの絵にサインをしてくれたり、
「もう1回!」と【もっと】のベビーサインでお願いしてくれたり。
そうした経験が「絵本=楽しい」という気持ちに結びつき、
やがて「読むことそのものが好きな子」に育っていきます。
■ 読み聞かせは、“いつまで”続けたらいい?
私は、赤ちゃんの時期だけではなく、
文字が読めるようになってからも読み聞かせを続けてほしいと思っています。
なぜなら──
読み聞かせは「知識を伝える時間」ではなく、
親子が同じ世界を共有するコミュニケーションだから!
大きくなっても、親子で1冊の絵本を介して寄り添うことは、それ自体が温かな時間を作り出してくれます。
「ここ、おもしろいね」と感じたことをことばにしたり、
知らなかった言葉をその場で自然に吸収したり。
そんな時間は、脳の成長だけでなく、
子どもの安心感・自己肯定感にも寄り添ってくれます。
また、文字の読み始めの時期は、「読む」ことに一生懸命で、お話の世界を楽しむ余裕がありません。
だから、文字が読めるようになったから、「一人で読めるでしょ!」ではなくて、「読み聞かせ」は全く別のものって捉えて欲しいです。
とはいえ、忙しかったあの頃を思い出すと、子どもたちに十分大きくなるまで読み聞かせをしてあげられたか?というと、ちょっぴり後悔もあるんだけど・・・
■ おわりに
Aisling Murray 博士の研究が示すように、
0歳からの読み聞かせは確かな意味を持っています。
そして、ベビーサインの現場で20年以上赤ちゃんと関わってきた中で、
私は何度も実感してきました。
読み聞かせは、親子が心を通わせ、ことばの土台を育てる最強の時間だということを。
だからこそ、
生まれたてでも、
反応が薄くても、
ページを噛んじゃっても。
絵本の時間はいつだって、今日から始められます。
そして、続ければ続けるほど、親子の豊かな未来につながっていきます。
こちら、ベビーサイン図鑑にはそんな絵本の大切さも書きました。
良かったら手に取ってみてください。

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