2025.11.11赤ちゃんはどんな色が好き?——科学でわかる、赤ちゃんと「色」のお話
最近、育児グッズやおもちゃの世界では「アースカラー」が人気ですね。
ベージュやくすみピンク、淡いグレーなど、やさしい色合いに包まれると多くの大人もホッとするのかもしれません。(あっ、でも、わたし個人的には、アースカラーあんまり好みじゃないんですが・・・)
そこで――ふと考えてみたことはありませんか?
「この色、赤ちゃんにはどう見えているんだろう?」と。
赤ちゃんの目の世界は“大人とはちがう”
アメリカの発達心理学者 マーク・H・ボーンスタイン(Marc H. Bornstein) は、1970年代から乳児の色知覚を研究してきた第一人者です。
彼の研究では、生後4か月ほどの赤ちゃんにさまざまな色を見せ、どの色を長く見つめるかを観察しました。
その結果——
赤ちゃんは「明るさ(明度)」ではなく、色そのものの違い(色相) に反応していることが分かりました。つまり、赤ちゃんの中にはすでに“色の世界”が広がっているということです。
さらに、生後数か月の赤ちゃんでも、赤・青・緑・黄といった色のカテゴリーをなんとなく区別できているという報告もあります。
これは、ボーンスタイン以降の研究者、たとえば アンナ・フランクリン(Anna Franklin) らによっても確認されています。
赤ちゃんがよく見る・好きな色
では、赤ちゃんはどんな色が好きなのでしょう?
多くの研究で共通しているのは——
👉 赤ちゃんは“鮮やかな色(高彩度)”を好む ということ。
くすみカラーや淡いトーンは、大人にとってはやさしくても、
赤ちゃんの視覚からすると“ぼやっとして見えにくい”ことがあります。
生後まもない赤ちゃんは、まだ視力が0.01〜0.1程度。
はっきりした色やコントラストの強いものに、より反応しやすいのです。
アースカラーは落ち着くけれど、刺激は少ない
最近の育児アイテムで多い「アースカラー」は、
確かにおしゃれで心地よい雰囲気をつくってくれます。
けれど、赤ちゃんの発達を促す“視覚刺激”という観点では、
少し物足りないかもしれません。
赤ちゃんの「見る力」や「興味を引き出す力」を育てたいときには、
ビビッドな赤や青、黄色など、はっきりした色をポイント的に取り入れるのがおすすめです。
たとえば:
-
壁や床はアースカラーのままでも、
-
おもちゃ・絵本・布の一部に“鮮やかな差し色”を加える。
それだけで赤ちゃんの目の動きが変わります。
(目で追う → 手を伸ばす → 触る → 声を出す、という発達の連鎖にもつながります)
ベビーサインで「色」を教えるのは、1歳半以降がベスト
ベビーサインを実践していると、「色のサインも早く教えたほうがいいですか?」という質問をよく受けます。
でも、私はこうお伝えしています。
色を教えるのは、1歳半以降がおすすめです。理由はシンプルです。
1歳前後までは、赤ちゃんがまず覚えたいのは
「ママ」「パパ」「おいしい」「もっと」「おしまい」など、
人や行動・気持ちに関することだからです。
これらは日常の中で頻繁に使われる“生きたことば”。
ベビーサインの最初の目的は、赤ちゃんが「伝えたい気持ちを表現できるようになること」です。
色の区別や言葉は、その次のステップ。
「ものの名前」や「遊びのバリエーション」が増えてきた1歳半ごろから、
“あか”“あお”“きいろ””オレンジ”といった色をサインで伝えてあげると、
ぐっと理解しやすくなります。
まとめ
-
生後4か月ごろには、赤ちゃんもすでに色の世界を感じています(Bornstein, 1975)。
-
鮮やかな色(高彩度)ほど赤ちゃんの注意を引きやすく、興味づけになります(Franklin et al., 2005)。
-
アースカラーは落ち着く環境づくりには◎、でも発達刺激には△。
-
ベビーサインで色を教えるのは1歳半以降がベスト。
まずは「伝えたいこと」をサインで共有することから始めましょう。
赤ちゃんの世界は、私たち大人が思っているより、ずっとカラフルです。
その世界を一緒に見て、手で、目で、ことばでつないでいく——
それが、ベビーサインのいちばんの魅力ですね。
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